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「おはようございます、姫宮様。そしてお帰りなさいませ。そろそろ昼食の準備が整います。もう少し待って頂けましたら、出来上がりますがどうされますか?」
「食べたいので待ってます」
「承知しました。ではその間にお着替えなさってください」
「それでは私はこれで」と一礼する今井が「ほら、安野さんも」とまだ話がと抵抗する安野を半ば引きずる形で共に去った。
嵐か過ぎ去った後のような、よく見慣れた光景だと妙な安心感を覚えた。
「あ、話の途中だったけど、その絵もらってもいい?」
大河が二度頷いた。
「ありがとう。この絵も部屋に飾っておくね」
受け取った時、微笑みかけて二度頭を撫でた。
「じゃあ、ママ着替えてくるから、小口さんと待っててね」
途端、不服そうな顔を見せたが、それ以上行動はすることなく、苦笑を滲ませながらも着替えに行った。
着替えた頃、ちょうど昼食が用意されていたこともあり、大河と一緒に食べた。
手を合わせた後、早速「あーん」の催促をしてきたため、「しょうがない子」と苦笑いを浮かべながらそうしてやると、眉間の皺が取れ、目を開いた。
機嫌を直したようだった。
その様子に微笑みながらも姫宮も食事に摂りかかっている時、安野が口を開いた。
「今日はどういうことをなさったんですか?」
口に入れようとした手が止まった。
やはりそのことを訊いてきたか。
正直に言うしかないと、ためらいがちに口を開いた。
「あ、えと⋯⋯健康診断のみで⋯⋯」
「あ⋯⋯へ⋯⋯? そうだったんですか⋯⋯」
目が点となり、硬直した。
「健康診断であったから朝食はなしと連絡を受けましたが、あれ?」
首を傾げて、少しばかり考えている顔をしていた。
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