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「ともかく申し訳ごさいませんでした! 今度からはきちんと伝えますので!」
「いえ、お気になさらずに⋯⋯」
毎度のことながら、ものすごい勢いで謝られるとどう反応をしたらいいのか分からない。
「お詫びに安野さんに何かやらせたらどうです? もしくは何か買わせるとか」
「小口、そんなことを⋯⋯いえ、いい案ですね。姫宮様、何かございますか?」
「何か⋯⋯」
急に言われても何かあるだろうか。
と、ふと思いついたのは男性用下着。
とはいえども、さすがにそのようなことを頼めるはずがない。
来週、帰りに自分で買ってこよう。
「何もないですかね⋯⋯」
「そうですか⋯⋯」
「ですが、今後とも食事の用意をして頂ければと思います。⋯⋯いつまで治験をやるかは分かりかねないですし、しばらく料理を作れないと思いますので⋯⋯」
「それはもちろんです!」
安野は拳を作って力強く言った。
「姫宮様のためならば、とびっきりの料理を作りますからね!」
「ありがとうございます」
今から美味しい料理を作らんばかりの張り切りように、姫宮は微笑み返した。
自ら進んでやろうとしたことではない、初めての場所に戸惑うばかりではあるが、安心できる場所に帰ったらとびっきり美味しい料理が待ってる。
それを糧に来週からも頑張ろうと心に誓った姫宮は、料理を口にするのであった。
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