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研究員のうちの一人から検診衣をもらい、「また後で〜」と美澄と一旦別れ、一時の姫宮の場所となっている更衣室に入り、着替えた。
全身鏡が目に入った時、つい見てしまう穢れた肌を擦りつつ、更衣室を後にした姫宮は美澄と合流し、先に来ていた被験者の後ろに続けて並んだ。
「今日の結果はどうかな〜。俺、まともな食事をしてないからなぁ」
「そうなんですか」
「うん。作れなくもないけど、料理を作るよりもゲームの時間に費やしたいからさ、コンビニ弁当かインスタントが多いんだよ。食べる時間も惜しい時はスナック菓子で済ませてしまうね。片手で食べれて手軽じゃん?」
「ええ、まあ、そうですね⋯⋯」
それはどうなのかと思ってしまったが、代理出産の時、依頼者の指示できちんとした食事が提供されていたからそれなりにまともな食事を摂っていたが、そうでなければ姫宮も人の事を言えないような食事をしていたと思う。
今も安野達が毎日美味しい料理を作ってくれているおかげで食が細かったのが、徐々に摂れるようになり、食事に対しても興味が出てきたほどだ。
治験をやるように言われてから不安と緊張でやや食事量が減ってきたが、恐らく変わりはしないだろう。
何か言いかけた美澄が呼ばれたことにより、話すのを中断し、見送り、手持ち無沙汰となった姫宮は前方の扉を見つめていた。
そうしているうちに姫宮が呼ばれた。
中にいた倉木と軽く挨拶した後、彼は言った。
「先週の健康診断、お疲れ様でした。結果の方ですが、体重が平均よりも軽い程度で、他の数値は軒並み平均で、特に治験の影響はなさそうなので、引き続き参加して頂ければと思います」
「はい、そうですか⋯⋯」
「何か気になる点が?」
「あ、いえ、何も」
咄嗟にそう言ってしまったが、言い直すのもどうかと思い、そのまま話を終わらせた。
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