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「独特ないただきますをするね。ま、俺なんて言わずに食うけど」
「ええ、まぁ⋯⋯」
曖昧に返事をする。
ついしてしまう挨拶。
止めなければと思うけれども。
スプーンに掬い、それを口に含んだ。
オムライスも普通に美味しい。
前に江藤と一緒に作ったオムライスは、卵を焼きすぎてしまい、固めで形が崩れてしまったし、ケチャップライスもべちょっとした仕上がりになり、悲惨なものであったが、一緒に作ったことが楽しかったし、今食べているオムライスを見たら、また作りたいと思うようになった。
「オムライスもどう?」
「美味しいです」
「そうかぁ〜」
訊いてきた美澄はまた麺を啜った。
姫宮も二口目をゆっくり咀嚼していると、「そういえば」と口を開いた。
「愛賀はスマホで何やってたの? ゲーム? 動画?」
「写真を見てました」
「写真?」
何の? と言いたげに首を傾げた。
テーブルに置いていた携帯端末を手に取り、「これです」と見せた。
「子ども⋯⋯? 愛賀って子どもがいるの?」
「はい。こないだ5歳になりました」
「へ、へぇ〜」
顔を上下に揺らし、感心といった様子でまじまじと見た。
「え、てか、愛賀は何歳?」
「23、です⋯⋯」
「23!? え、23? ⋯⋯え、ってことは、18で産んだってことになるよね。すごいなぁ、俺なんて21だけど、今でもそういうこと考えられない⋯⋯あれ、年上ってことになるよね。じゃあ今から敬語で話します」
「あ、いえ、お気遣いなく⋯⋯」
「愛賀も砕けた言い方をすればいいのに」
「私はこれで慣れてしまったので⋯⋯」
そう言うように躾られ、板についてしまったことが要因だった。
あのような場所から出られても、砕けた口調でいたのはほんの僅かな時で、それからまたこの口調でいた。
自分の立ち位置が限りなく下で、どんな相手でも機嫌を窺うような口調。
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