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少し歩いては後ろを見るように身体をくねらせる。 昨日。美澄と会社の出入口で別れた後、事前に調べていた場所へとどうにか行った姫宮は、男性用下着を買った。 今まで穿いているものと同じような形状のものにしたが、やはり肌触りが違うせいか、違和感があり、そわそわする。 コートが臀部辺りまで隠れているおかげで今の格好だと見られはしないが、検診衣がふとした時に見られる可能性があるから穿いたが、穿き慣れた方にするべきだったか。 「──何さっきから後ろを気にしてるの?」 肩をびっくりさせ、後ろを振り返ると、「やぁ」と軽く手を上げた美澄がいた。 「美澄、さん⋯⋯」 「新しいストレッチか何か?」 「ええ⋯⋯まあ⋯⋯」 「へー」 突っ込むような質問を投げかけられるのかと思ったが、さして興味なさげに返事をした。 そこまで首を突っ込むような人ではなくて安心した。 「今日も昨日と変わらないことをするのかなぁ。だとしたら、ゲームやりたい放題だー」 「そうですね⋯⋯」 曖昧に返事しながら臀部辺りに触れた。 歩く度に食い込むような違和感があり、それが気になって仕方ない。 「愛賀はゲームはしないの?」 「ゲームは、しないですね⋯⋯」 「へぇー、じゃあ趣味は何?」 「趣味⋯⋯」 思考をそちらに寄せる。 写真を撮るのは嫌いではないが、いい場面を撮り損ねることが多いためそうでもないし、お菓子作りは失敗ばかりで趣味とも呼べないし、編みぐるみもやり始めたばかりで人様に見せる程の出来栄えではないため、それもそうとはっきりと言えない。 そうなると趣味らしい趣味がない。 何が好きなのか。何がしたいのか。 「趣味はありません⋯⋯」 「へ、そうなの?」 意外だという声を上げた。 そう思われてもおかしくない。 つまらない人間だと思われているのだろうと思っていた矢先、美澄はこう続けた。

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