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昼時。昨日美澄に迷惑を掛けてしまったのもあり、時間がなくても食べれそうな量のものを注文し、しかし思っていたよりも早く食べ終わった姫宮は手慰めに携帯端末を弄っていた。
ちなみに美澄は食べながらゲームに勤しんでいる。
なんでも「大事なイベがあるっ」と言って忙しそうだ。
そのイベというのが何なのかは姫宮には分かりかねないが、邪魔しないように努めた。
画面を眺めていると、チャットアプリのアイコンの右上に『1』と表示されていた。
それは誰かからメッセージが送られたというものだった。
アプリを開くとどうやら送ってきたのは玲美だったようだ。
『伶介が大河君のお家にお泊まりしたいと言っているのですが、お泊まりしに行ってもよろしいでしょうか? 私は夕方頃までになってしまうのですが』
お泊まりしたいなんて言ってきたのは初めてだ。
きっと大河は喜ぶであろう。
しかし自分だけで決めても良いものなのだろうか。
ひとまず安野に『松下さんのお子さんがお泊まりしたいと言ってきたのですが、してもよろしいのでしょうか』と送り、返事を待った。
それから何となくスクロールする。
と、あるアイコンに目が止まった。
それから目を右に動かした。
『慶様』
交換した際は『御月堂慶』と表示されていたのだが、名前欄を変えることができるらしく、それならばと『慶様』と変えてもらった。
それにしてもせっかく交換したというのに、何にもやり取りをしてなかった。
とはいえ、何の話をしたら。
御月堂との共通の話題はなんだろうか。
今日の天気の話なんてしてもすぐに終わってしまうし、とはいえ姫宮の周りで起きた出来事は大して面白くないと思われそうで、それに返事に困ってしまうかもしれない。
他に、何か。
さ迷わせていた指がホームボタンに触れてしまったらしく、ホーム画面に切り替わっていた。
さっきのアプリに戻らないとと、指をタップしようとした時、あるアイコンが目に入った。
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