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84.
昨日と同じような内容であるはずなのに、寄り道した時と同じ時間帯になっていた。
この時間はちょうど夕食の時間だ。
いつ帰るか分からない姫宮を待つよりも先に食べていることだろう。
帰ってきた姫宮は自室で着替え、その足でリビングへと向かった。
「姫宮様、お帰りなさいませ」
ちょうどダイニングから出てきた上山が、目が合うなりそう声を掛けてくれた。
手には今日の料理であろうそこからとてもいい匂いが漂ってきて、それを嗅いでは目を細める。
「今日は何ですか?」
「ロールキャベツのクリーム煮ですね。今日も寒いですし、外から帰ってきた姫宮様が温まる物が良いと思いましてこれにした次第です」
「お気遣いありがとうございます」
「いえ、姫宮様も今日も遅くまでお疲れ様です。ちょうど温かい物を用意しましたので、お召し上がりください」
「はい。ありがとうございます」
道を譲ってくれたことにより軽く会釈した姫宮は、テーブルの方へ行こうとした時だった。
姫宮の姿を見るなり駆け寄ってきた大河が、姫宮に向けて、パシャリと軽い音を立てた。
突然のことにきょとんとした。
その音の正体らしき物の大河が持っていたのは水色のパステルカラーの長方形の物。
呆然とする姫宮の姿も撮り逃さんばかりにパシャパシャと撮り続けていた。
「それはスマホ⋯⋯? どうしたの、それ」
大河には買い与えてないはずだ。だとしたら一体誰が。
「それ、オモチャなんですよ。今時のオモチャってすごいですよね〜」
後からやってきた小口が答えた。
「オモチャ⋯⋯? これが⋯⋯?」
改めてまじまじと見る。
すると大河が引き気味に身を退けていたことから、「ごめんね、大河」と身を引いた。
途端、写真を撮りまくっていたが。
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