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「お食事の最中に大変申し訳ございません。すぐに言わねばならないことがございました。姫宮様、安野さんからのメッセージを見ましたでしょうか」
「え?」
ポケットから携帯端末を取り出して見てみると、『全然構いませんよ。姫宮様がそうしたいのなら玲美様にそう仰れば良いのです。私にはいつ来られるか報告して頂ければ』と返信が来ていた。
メッセージが来た時間は帰宅している最中だったようだ。
『すみません。今気づきました。玲美さんに伝えておきます』
それから玲美に『お泊まりのことなんですが、いいですよ』と返信し、お泊まりのことで聞いてきた玲美にケーキ屋を訊いた旨の回答も先に来ていたことから、それを御月堂に伝えた。
「上山さん、ありがとうございます。言われなければ全然気づきませんでした」
「どういたしまして。これで安野さんはひとまず安心なさるかと思います」
その短い一言には、姫宮に送ったものの姫宮からの返事が来なく、どうしたのか何かあったのか、と慌てふためいて今日いる上山にそのような旨を送ったのだろう。それも大量にといった具合に。
上山に何かと迷惑も掛けたし、先程の場面を諫めてくれたからそれこそお礼に何かあげた方が良いのかと思いつつ、ロールキャベツを食べて上機嫌そうな大河に言った。
「大河、伶介くんがお家にお泊まりしたいんだって」
首を傾げる大河。
「伶介くんがお家に遊びに行った時、夕方になったらばいばいするでしょう。それが夜は一緒に寝られるし、いつもよりもいっぱい遊ぶことができるの。楽しいと思うんだ」
それを聞いて大河は目をキラキラと輝かせた。
お泊まりのことが理解できたようだ。
「れー⋯⋯す、けぇ⋯⋯」
目を丸くした。
「今、なんて⋯⋯」
驚いた顔をする姫宮のことを気にしてないのか、それよりも伶介が来ることに嬉しくてたまらないのか、ぎゅうっと抱きついてきた。
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