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88.
『まま』と呼んだ時も突然だった。
その突然が驚きを超え、感極まったものではあったが、大河も日々成長し、努力しているんだなと思うと愛おしくてたまらない。
「えらいね、大河」
「ま⋯⋯ま⋯?」
急に褒められたことに不思議そうな顔を見せる大河だったが、頭を撫でられたことに嬉しく思っているようで、そのような顔を見せる。
「伶介くんがお泊まりするの、楽しみだね」
うんっと強く頷いてみせる大河に微笑んだ。
「食べている最中だったね。食べようか」
素直に頷く大河が食べ始めたのを見た後、姫宮も食事を再開した。
料理を堪能していると、「聞きたいことがあるんですが」と江藤が前置きをして言った。
「今日も昨日と変わらない内容で?」
「はい、そうですね」
「今日は何をお食べに?」
「今日はミートスパゲティを食べました」
「左様でございますか」
会話に入ってきた上山が笑みを含んだ顔をした。
ちゃんと食べているかどうか気になったのだろうか。
そう思いながら料理を口にした時、ある話題を口にした。
「そういえば、何かと話しかけてくる人がいるんです」
「なになに! ナンパですか! 私が悪い虫を追い払いますよ!」
「多分、悪い人ではないと思うのです。同じオメガに会えて嬉しいと話しかけてきたので⋯⋯」
「そうなのですね」
過剰に反応した江藤のことを宥めることが出来て良かったと内心安堵していた。
「私自身も同じオメガに会えるとは思わなかったので」
「いい機会ともいえましたね」
「はい」
「ちなみにどんな方なのですか?」
どんな方。
途端に頭に浮かんだのは、不気味な笑い方をする美澄。
一旦そのことは置いておき。
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