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「大河が来たので申し訳ありませんが、電話を切らせて頂きます」
『ああ、そうだな。それは仕方ない』
「⋯⋯慶さま」
『なんだ』
「会えるのを楽しみにしています」
顔を綻ばせながら言った。
大河が来る直後に言いたかったことが言えて良かった。
『⋯⋯私も、楽しみにしている』
「あの、お仕事お疲れ様です。おやすみなさい」
『おやすみ』
どちらともなく、通話を終わらせた。
御月堂とのメッセージのやり取り画面に戻ったが、その目には頭に浮かべる愛しい人物が映った。
会える。近いうちに会える。
携帯端末を胸に抱き寄せた。
「まっ⋯⋯!」
はっとして目線を落とす。
怒っているようで、姫宮の膝を叩いていた。
いつの間にか頭を撫でなくなり、御月堂に意識を向けたことが気に入らなかったと思われる息子に「ごめんね」と慰めの意味で改めて頭を撫でてあげた。
すると、すぐに機嫌が良くなった大河は嬉しそうにその場に飛び跳ねるように姫宮から離れると、腰に手を当てて身体をくねらせた。
突如として目の前で始まった行動に、風呂から上がって綺麗さっぱりになった自分を見てもらいたいのだと分かった瞬間、笑みを零した。
「ふふ、さっぱりしたねぇ」
微笑みを向けるとぎゅうっと抱きついてきた。
「でもね、大河。お部屋に入る時は扉をトントンと叩いて入ってもいいかって訊かないとダメだからね。さっきみたいに電話をしているかもしれないから」
「ま⋯⋯」
話を聞いているのかいないのか、よじ登ってきた我が子に仕方ないといったように抱き上げては膝上に乗せてあげると、大河は胸に顔を埋めた。
本当にしょうがない子。
困ったような顔をした姫宮は背中を優しく叩いた。
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