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「で、ママさまのところに一目散に行くのは勝手ですけど、髪を乾かさないと風邪を引きますよ。それこそカッコ悪いところを見られても知りませんからね」
先ほど髪に触れた時、そういえば湿っていた。
「小口さん、ドライヤーを貸してください。私が乾かしておきますので」
「そうですか。ちょっとお待ちください」
一旦部屋を出た小口が持ってきてくれたドライヤーを受け取った際、小口が大河に言う。
「そのまま一緒に寝るんですか?」
顔を逸らしたまま、うんうんと面倒くさそうに頷いた。
「そうですかー。じゃあわたしは部屋を独り占めさせてもらいます」
おやすみなさいと出て行った。
それを見届けた後、大河の顔を見ると少しばかり機嫌が直ったらしい。
「髪乾かそうか」
そう声を掛けると、大河が背を向けた。
「いい子」と言って、乾かし始めた。
風呂から上がってすぐに来たとはいえ、乾き始めていたそれをまんべんなく熱い風に当てた。
乾かしながら、不意に壁に飾ってあるものをちら見した。
買ってきてもらった額縁に大河が描いた絵や自分が撮った写真を飾っていた。
面積がある壁にはまだまだ飾れるスペースがあるため、より多く飾りたいと思っているところだ。
「はい、乾いたよ」
「ま⋯⋯ま、ぁ⋯⋯」
振り返った大河がぎゅうっと抱きついてくる。
大好きな母親にやってもらって、すっかり上機嫌な様子だ。
ドライヤーを持ってきてくれる時にブラシも一緒に持ってきてもらえば良かったと、ドライヤーの風でボサボサになっている髪を撫でるような手つきで軽く梳いてあげた。
と、後ろを振り返った大河が壁を指差した。
その差した方向は先ほど見ていた飾りもの。
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