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治験を始めてから初めての休み。 一日大河と一緒にいられるし、それに。 大河と共に玄関にいた。 大河は落ち着かなさそうに編みぐるみをこねくり回していた。 そんな大河を宥めるように頭を撫でていると、玄関が開いた。 「こんにちはー! たーちゃん、きたよー」 ぱっと笑った伶介が元気よく手を上げて入ってくるなり、大河は駆け寄っては手を取り合い、「まっててくれたんだね。うれしい!」ときゃっきゃとしていた。 その様子を微笑ましげに見つめていると、玲美に声を掛けられた。 「姫宮さん、今日はありがとうございます」 「いえ、こちらこそ。大河がこの日が来るのを楽しみにしていて、そわそわしていました」 「そうでしたか。実は伶介も大河君に会うのが待ちきれなくて⋯⋯」 「ままっ! はずかしいからいわないで!」 わっと声を上げた伶介が、「たーちゃん、いこ!」と言って、驚いている伶介を連れてリビングへと駆け出していった。 「あら、へそを曲げちゃったわ」 おどけてみせた玲美がやがてくすりと笑った。 「伶介も大河君の前ではカッコつけたいのかしら」と言って。 「伶介くん怒っちゃったですけど⋯⋯」 「大丈夫ですよ。すぐに機嫌が直ってますよ。なんたって大好きな大河君に会えたのですから!」 握った両手を上げて、満面の笑みを見せた。 「そうですか⋯⋯それは良かったです⋯⋯」 なんと反応したら良いのか、けれどもそんなにも会いたがっていたのかと思うと、自分のことのように嬉しくなる。 「さて、私達も行きましょうか」 「はい」 玲美と話しながらリビングへ向かい、二人を見ると、こないだのようにボードで遊んでいた。 それを玲美と微笑ましげに見つめていると、安野が「松下の奥様、ようこそいらっしゃいました」と声を掛けてきた。

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