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104.
「じゃあ、ママ達が支えているから、二人は合うピースを探してみて」
「うん!」
ひと通り説明書らしきものを読んだ玲美は、伶介が支えているところを今度は支えると姫宮に言った。
「これ、揃ったところから糊でくっつけていくみたいなので、姫宮さんその担当をしてもらえますか?」
「え⋯⋯あ、はい」
「箱に入っていますよ」と言う玲美の言葉を半ばに、それらしいものを見つけると手に取った。
手のひらに収まる大きさのガラス製の中に、糊らしい液体が入っていた。
蓋の部分をくるくると回すと、先がハケになっており、塗りやすくなっているようだった。
上手く塗れるかな。
「それ、なんだかマニキュアみたいですね」
「マニキュア⋯⋯?」
「爪に塗る液体が小瓶みたいのに入っているものです。ちょうど蓋部分にハケがついていて。そうだ、今度姫宮さんの爪に塗ってあげましょうか」
「え、いえ、そんな塗るなんて⋯⋯」
「試しに塗ってみてもいいと思いますよ。姫宮さんの爪、形も良くて塗り甲斐がありますし」
マニキュアなんてもちろん塗ったことがない。
それに人に言われるまで自分の爪の形が良いとも知らなかった。
自分からしようとは思わないことをそのきっかけで少しでも興味が持てたら。
淡い期待を胸に今にもしたくて堪らなさそうな玲美に、「では、お願いします」と言った。
「ふふ、次の楽しみができました。では塗っていきましょうか」
「はい」
持っていた蓋部分を「ここをまず塗りましょう」と言う箇所にハケを持っていく。
支えてくれている玲美の指に付かないよう、言われている箇所に糊を乗せようと近づけようとした。
ところが、緊張しているようで指先が小刻みに震えてしまい、手元が狂い、塗るどころかハケを持っていくことすらできなかった。
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