105 / 184

105.

「私の指に付いちゃっても大丈夫ですから、遠慮なく塗っちゃってください」 そう言いつつ、姫宮が塗りやすいよう角度を変えてくれたこともあり、合わさったパズルに塗ることができた。 「いい感じです」 にっこりと笑い褒めてくれたことで、上がっていた肩を吐いた息と共に下ろした。 「ままー、このぴーすがあうかも!」 「はあい」 糊で塗った箇所のピースにはめ、「ここお願いします」と言われ、慎重に塗った。 大河もまたはまるピースを見つけたようで、それを伶介がはめたピースにはめていた。 「はまったね」と笑いかけながら、大河がはめたピースにも糊付けしていく。 地道ながらも子ども達がピースをはめてくれていっているうちに、胴体の半分に到達していった。 「立体パズルを作ったことがなかったので、時間がかかりましたが、こうしてみますとやりがいがありますね」 「本当にそうですね」 「姫宮さんも楽しそうで」 「そんな顔をしていましたか⋯⋯?」 「ええ、それはとても。子ども達が楽しそうにしているのを見ていたからかもしれませんね。⋯⋯それとも、可愛い可愛い我が子のためにあのお方が贈ってくださったことですか?」 「⋯⋯!」 耳元に近づけて言ってきた言葉に、ボっと顔が熱くなる。 頬に手を当てていると、「ふふ、可愛らしいですね」と温かく見守っているように微笑んでいた。 「あれからやり取りはしているのですか?」 「大河の写真を送った以来特には⋯⋯」 玲美がケーキ屋の名前を教えてくれ、そこに売られているガトーショコラが偶然にも一緒だったということを思い出す。 珈琲を嗜んでいてくれたおかげで、その偶然が生まれた。 ちょっとしたきっかけがこんなにも嬉しい出来事が起きるなんて。

ともだちにシェアしよう!