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109.
「じゃあ、つぎなにしようか」
そう声を掛ける伶介に、大河がおもちゃ置き場へと駆けていく姿を尻目にソファに座り、立体パズルを眺めていた。
素敵な物を贈ってくれて本当に嬉しい。
人知れず微笑んでいた後、お礼も兼ねてさっきの写真と共に今まで撮った写真も合わせて御月堂に送った。
少し待ったが、『既読』が付かなかった。
あの時のはたまたまだったのか、と肩を落とした姫宮だったが、首を横に振った。
あの方は忙しいのだから当たり前。少しでも話せたのなら嬉しいと思わないと。
己に言い聞かせて、テレビでも観ていようかと付けた番組をぼんやりと観ていた。
『だ』
機械音が耳に届いた。
その方へ顔を向けると、二人がボードで遊んでいた。
伶介が来た時も見た光景に、それほど伶介と話したいことがあるのだろうと思い、テレビの方に視線を戻そうとした時だった。
『だ』と再び押した大河に対し、伶介がその言葉を発していた。
そのことに関しては問題ない。
その伶介が発した言葉に大河が倣うように口を開けていたのだ。
伶介が泊まりにくるよ、と言った時のことを思い出す。
あの時の『れいすけ』発言は伶介が教えてくれた言葉を大河が一生懸命発した努力の結果だったのか。
「だ」
「⋯⋯っ」
伶介が発する言葉に大河もまた口を開いて発しようとしている。
その様子を見守っていると、不意に大河が振り返り、そして目が合うとふいっと目を逸らされてしまった。
見られたくなかったのかな。
ちょっと傷つきながらも見ていた自分の方が悪いと思い、テレビの方に視線を向けた。
時期が時期だからか、各地で彩られているイルミネーションをリポーターが紹介していた。
こんなにも素敵なところがあるのだと関心したのと同時に、大河とも一緒に見に行けたらなと思う。
少しでも大河には楽しい思い出を作って欲しいから。
と、ふと画面左上を観るとそろそろ夕飯の準備をする時間となっていた。
今日は久しぶりに小口が加わって料理をすると言うので、一緒にやりたいと思っていたのだ。
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