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テレビを消し、立ち上がった時だった。 「ま⋯⋯っ!」 大きい声で呼ばれ、思わず驚いて振り返ると大河が駆け寄ってきた。 どことなく何かを訴えたい目に、どっちしろ無下にできず、大河の目線を合わせるようにしゃがんだ。 「ま⋯⋯ま⋯⋯」 「どうしたの」 「ま⋯⋯」 「うん」 「ま⋯⋯ぁ、ま」 「うん」 「ま⋯⋯っ、だ⋯⋯っす⋯⋯」 違う言葉を発しようとしている。 その言葉はついさっき伶介が発していた言葉。 固唾を飲んで見守る。 「だ⋯⋯ぁ⋯⋯す⋯⋯っ」 両手を握りしめ、踏ん張るような顔を見せる。 その言葉は⋯⋯。 「⋯だ⋯⋯っ、⋯⋯す⋯⋯き」 やっぱり。 分かっていたけれども、驚くには充分なものだった。 大河は満足したようで、ようやく言えたと言わんばかりに嬉しそうに抱きついてきた。 大河が言いたかったこと。 その驚きが段々と視界を滲ませるものとなった。 「大河⋯⋯。うん、ママも大好きだよ」 ぎゅうと抱きしめる。その感情が抑えきれなくて、嬉しくて堪らないといったように。 大河は頑張っている。大河なりに言葉を伝えようとしてくれている。 ふと、大河の背後にいた伶介と目が合った。 「伶介くんが大河に言葉を教えてくれていたんだよね。大河のためにありがとう」 「たーちゃんがじぶんではなしたいといっていたから、ぼくはてつだっただけです。でも、たーちゃんままもたーちゃんもうれしそうで、ぼくもうれしいです」 にっこりと笑う伶介に目を細めて笑う。 大河の初めての友達が伶介で良かったと本当に思った。 玲美も姫宮共々何かと気にかけてくれて、感謝してもしきれないほどだった。 こないだのケーキのお返しも含めて姫宮は、二人に何が返せるのだろうか。 何をしたら喜んでもらえるだろうか。

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