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その瞳に吸い込まれるように顔を近づけ、唇を重ね合わせた。 「⋯⋯⋯」 見つめ合っている最中、下ろしていた御月堂の手にそっと触れる。 ピクっと反応したが、構わず彼の手を絡めた。 「⋯⋯愛賀はこの贈り物でいいのか?」 「はい。慶様と過ごせる上に、その⋯⋯甘いものまで。私には充分なものです」 「⋯⋯そうか」 その声音は納得してないようだった。 いつなのか知りたい誕生日プレゼントも贈りたいのに、クリスマスでさえ贈れないことに気を揉んでいるのだろう。 だが、この第二の性になってから何も与えられず、奪われるだけだった姫宮にとっては、今このひとときに満たされているのだ。 しかし、誕生日。 健康診断の時に記載された生年月日は、自分で書いてないから違和感はあるが、それでも妙にしっくりとくるのだ。 奇妙な感覚に襲われるが、その日だと御月堂に伝えるべきだろうか。それとも。 「慶様の方こそ、何か欲しいものはございますか?」 姫宮ばかりもらっては不公平だ。 出来る限り彼にお返しをしたいし、彼の誕生日だって知りたい。 「そうだな⋯⋯」 少し考えた後、こう言った。 「特にないな」 「そうですか⋯⋯」 「私も人のことを言えないな。私も愛賀と過ごせるだけで満足しているということだな」 「ふふ、そう言っていただけて嬉しいです」 とん、と肩に寄りかかる。 そう言われて気持ちも満たされるが、それでも何か物をあげたい気持ちは諦めきれなかった。 「慶様の誕生日はいつなのですか?」 「5月5日、だったかと」 不確かな言い方をする彼に思わず顔を上げた。 すると罰が悪そうな顔をした。 「すまない。自分の誕生日を祝ってもらう習慣がなくてな。確かその日だったかと思う」 自分以外でも自分の誕生日を忘れている人がいるんだ。 理由が違えども、自分だけじゃないことにありえなくもないことだと思うと、不安が少しでも払えた。

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