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「慶様の誕生日が知れて良かったです。欲しい物があってもなくてもその日は必ずお祝いします。その日に産まれたんだと慶様が確かにそうだと思えるぐらい、毎年欠かさずお祝いします」 そんなことを言われると思わなかったという顔をする御月堂の手を両手で包み込むように握る。 「⋯⋯愛賀⋯⋯。ひとまず礼を言う」 「いえ、こちらこそ。まだ誕生日を迎える前に知れて良かったです。これから楽しみです」 ふわっと笑みを見せると、御月堂も僅かにそれらしい顔を見せる。 「私も愛賀の誕生日を知りたい。しつこいと思われるかもしれないが、私の誕生日を教えたことだ。愛賀の誕生日も知りたいと思うのは自然なことだと思われるが」 御月堂の誕生日を知りたいと思う姫宮と同じく、御月堂もまた姫宮の誕生日を知りたいと思うのは自然の流れだ。 特にあの時すぐに言わなかったから尚更。 今度こそ言わないと、御月堂が自分のことを信用してないと思ってしまう。 「2月23日⋯⋯です」 妙にしっくりくる、恐らくそれだと思われる誕生日を告げた。 しかし、はっきりとそれではないかもしれないと思うと、悪いことをしたような気分になり、やはり罪悪感という感情に苛まれる。 「そうか、2月23日か。愛賀の方もまだ迎える前に知れて良かった」 笑みと思える顔を見せる。 いつもなら嬉しく思う表情。だが、今は胸がチクリと痛み、その痛みに耐えるような困り笑いをした。 「毎年の楽しみができた」 「⋯⋯私もです」 そう言われて嬉しく思うはずなのに、声が震えていた。 繋いでいた手も心なしかそうなっているような気がして、だが、離したくなくてきゅっと少しばかり握る手を強めた。

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