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115.
「まだお時間はございますか」
「ああ、問題ない」
まだこの温もりを感じられる。
そう思うのは正直嬉しい。だから、それに意識を集中させ、そうだと錯覚するようにと己に言い聞かせ、これ以上表情を見られないように再び肩に寄りかかった。
自然とテレビの方に視線を向ける形になった時、御月堂は言った。
「今付けているこの番組はなんだ」
「適当に付けたので分かりかねますが、多分ドラマかと」
「そうか」
そう呟いたきり、静かになった。
ちらりと、隣を見やる。
彼は真剣な眼差しでテレビを観ている。
その横顔が凛々しくも真面目な顔をして観ているのが、そんな顔をするほど見入っているのかと思えたものの、その様子になんだか面白いと思い、小さく笑ってしまっていた。
「どうした」
「あ、いえ⋯⋯。真剣な顔をして観ているので、慶様にとってそんなに観てしまうほど面白いかなと思いまして」
「普段テレビを観ないからな。観るとしたらニュースぐらいだ」
前に大河が観ている『ハニワのだいこうしん!』を興味津々で観ていたほどだ。
ドラマはおろか、アニメもろくに観る習慣がない家庭だったのだろう。
「それはその、昔からそうなのですか?」
「そうだな。両親も観ている暇がなかったからだろうな。観る習慣がなかった」
「そうなんですか⋯⋯」
「⋯⋯愛賀は、」
「はい?」
「⋯⋯いや、なんでもない」
首を軽く振って、口を閉じてしまった。
御月堂も同じことを訊こうとしたのだろう。しかし、過去のことを触れられたくないと思われているから、そのことを訊くのを止めてしまったのだろう。
そのことに関しては訊いても問題ない。
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