115 / 184

115.

「まだお時間はございますか」 「ああ、問題ない」 まだこの温もりを感じられる。 そう思うのは正直嬉しい。だから、それに意識を集中させ、そうだと錯覚するようにと己に言い聞かせ、これ以上表情を見られないように再び肩に寄りかかった。 自然とテレビの方に視線を向ける形になった時、御月堂は言った。 「今付けているこの番組はなんだ」 「適当に付けたので分かりかねますが、多分ドラマかと」 「そうか」 そう呟いたきり、静かになった。 ちらりと、隣を見やる。 彼は真剣な眼差しでテレビを観ている。 その横顔が凛々しくも真面目な顔をして観ているのが、そんな顔をするほど見入っているのかと思えたものの、その様子になんだか面白いと思い、小さく笑ってしまっていた。 「どうした」 「あ、いえ⋯⋯。真剣な顔をして観ているので、慶様にとってそんなに観てしまうほど面白いかなと思いまして」 「普段テレビを観ないからな。観るとしたらニュースぐらいだ」 前に大河が観ている『ハニワのだいこうしん!』を興味津々で観ていたほどだ。 ドラマはおろか、アニメもろくに観る習慣がない家庭だったのだろう。 「それはその、昔からそうなのですか?」 「そうだな。両親も観ている暇がなかったからだろうな。観る習慣がなかった」 「そうなんですか⋯⋯」 「⋯⋯愛賀は、」 「はい?」 「⋯⋯いや、なんでもない」 首を軽く振って、口を閉じてしまった。 御月堂も同じことを訊こうとしたのだろう。しかし、過去のことを触れられたくないと思われているから、そのことを訊くのを止めてしまったのだろう。 そのことに関しては訊いても問題ない。

ともだちにシェアしよう!