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123.※自慰
「は⋯⋯っ、はぁ⋯⋯ぁ⋯⋯っ」
身体が跳ねる。下腹部に熱が溜まる。
この感覚は。
このまま刺激を加えていたら、あの感覚を味わえる。
してしまいたい。あの感覚に酔いしれたい。
しかし、もしかしたら服を汚してしまうかもしれない。
手を緩めず、達したい欲を引っ込めず、しかしほんの少し意識を外にやり、大切なものを汚さないであろう位置に追いやった。──直後。
「⋯⋯は⋯⋯ぁ⋯⋯っ」
ぶるっと震わせ、最小限に留めようとやや閉じた足の間から、ピュルッと白液が放たれた。
小さく息を吐きながら、床に飛び散ったそれを見つめる。
「慶様⋯⋯」
絶頂に達した後、急に寂寥感に襲われた。
頂に達するあの感覚を味わいたくて、欲のまま貪ったが、それを越えてしまったら虚しさしか残らない。
幸福はいつまでも続かないのにどうしてしてしまうのだろう。
余韻を残しつつ、穿き直し、床も綺麗にした姫宮は名残惜しそうに抱きしめていた服を再度抱きしめ直したのも束の間、出していた服もろとも丁寧に畳み直し、元あった場所に押し戻した時、小さくため息を吐いた。
この調子だとすぐに興奮してしまう。
持って行くなんてもってのほか。普段もよっぽどのことじゃない限り出さないでおこう。
御月堂には悪いが己の性が悪い。
入れ代わりに取り出したキャリーケースを開け、それから開けっ放しのクローゼットを見据える。
今すべきことをしないと。
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