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入ってすぐ目についたのは、病院で見かけるタイプのベッド。 病室と呼ぶのがふさわしいぐらいに清潔感あるそれは、至って普通の病院ベッドだが、何故か心をざわつかせる。 あのベッドでお世話になったのが、思わぬところで再会した"あの人"や御月堂との口論があったからだろうか。だが、あの病室での出来事は悪いことではなかったはずだ。 それなのに、緊張のようなものを感じるのは何故だろう。 「姫宮さんでしょうか」 「えっ、はい」 後ろから声を掛けられ、振り返ると先ほどこの部屋まで案内した人とは違う男性がいた。 今回の姫宮の担当医だと短く自己紹介した彼は続けて言った。 「室内を簡単に説明しますね。奥の窓は今の時間帯をリアルタイムに映している映像です。ここに来るまでご存じかと思いますが、ここは地下ですので、当然外の景色を見られません。ですが、そうなりますと圧迫感や不安に感じられるかと思います。それに配慮しての仕様となってます」 「そう、なんですか⋯⋯」 ベッドの奥、壁一面の窓の外には青空に照らされるビルが建ち並んでいた。 確かにここは地下にあるので、見える景色に違和感はあるが、ふとその先入観を切り捨てると、ここは地上のある病室なのだと思わされる。 「それから、ベッド横にあるテレビはご自由に使用してください。左手の部屋にはトイレとお風呂があります。ご利用ください」 「はい」 「それと、四隅に監視カメラがございますが、経過観察と姫宮さんが何かあった際にすぐに駆けつけられるように付いています。プライベートがありませんが、ご了承ください」 風呂場やトイレにはカメラは取り付けてないものの、長時間利用していた際には、入ってきた扉の横はマジックミラーとなっておりそこの部屋に看護師が常時滞在しており、その看護師が様子見に来る可能性があるとのこと。 そのマジックミラーは姫宮からでは見えない仕様となっていた。

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