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131.
「手を合わせ⋯⋯⋯いただきます」
少し迷ったものの、最初に手に取ったのは味噌汁。
一口飲むと、味噌の塩味が感じられ、ちょうど良い味わいにまた一口と飲んだ。
緊張で乾いていた喉を潤され、固くなっていた身体も少しは緩み、ほっと小さく息を吐いた。
それからご飯と魚、たまにサラダを口にし、ゆっくり咀嚼しては飲み込んでを繰り返す。
ありふれた食事内容で、これを食べればバランス良く摂れていいかもしれないが、何かが物足りなく感じる。
静かな空間にゆっくりと咀嚼する音が控えめに聞こえる。
自分の咀嚼音がこんなにも聞こえていただろうか。
今の暮らしをする前にも当たり前にあったかもしれないが、そのことがうろ覚えのように違和感を覚えた。
この物足りなさは、きっと大河を主にみんなと食事を囲んでいないからだ。
食堂で食べていた時だって美澄と一緒に食べていた。
いくら姫宮に合わせた食事とはいえども、たとえどんな食事であっても他の人と食べる楽しさを知ってしまったら、美味しいと感じられない。
この違和感の原因に気づいた時、やがて口の動きが止まった。
せっかく作ってくれたものなのに、食べなければ失礼になってしまう。
食べなければ怒られてしまう。
「⋯⋯」
口を少しずつ動かす。
それは先ほどよりも恐る恐るといったぎこちないもので、ひとまず口の中にあるものを飲み込もうとしたが、それすらも緊張で上手く飲み込めずしまいには一緒に運ばれてきたお茶で無理やり流し込んだ。
他の人にとっては大して食べてない量は、特に今の姫宮にとっては満腹に感じられるものだった。
目の前のほとんど手をつけてない食事に目を向ける。
食べないと。
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