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133.
大河のために編んでいる時、携帯端末の通知音が鳴った。
テレビ台に置いていたものだから、いつもよりバイブ音が大きく聞こえ、ビクッと肩を震わせ顔を上げた。
早く鳴る心臓を聞きつつも、それを手に取り見てみると、美澄からだった。
『昼食べた? 俺あんま食べれなかったんだけど』
姫宮からメッセージを送ってこないから自分から送って来たのかもしれない。彼の気まぐれもあるかもしれないが。
『私もです』と送った。
『だよね〜。あまりにもヘルシー過ぎて物足りなかったんだよね。まだ食堂の方が良かったわ』
食堂の料理は、安野達が作ってくれている料理よりも味が控えめではあるが、それでもさっきの昼食より味があると感じられた。
『二度目の健康診断の時に、食堂の料理のおかげで数値が安定してきているけど、もっと気をつけろって言われたから、味の薄いものを出されたのかもだけど』
美澄もまたその本人に合ったものを出されていたのか。
どんな食事内容だったのかと訊くと、ほぼ同じものではあるが、味噌汁がほぼ水かと思うぐらいの味で、具は大根と人参だったらしい。
姫宮のはもう少し具があったようなと思い返し、そしてそこまで制限されているのだと思うと、可哀想に思えた。
そして同時に、安野達の料理に感謝した。
美澄も安野達が作る料理を食べ続ければ、健康状態が良くなるだろうか。
そのうち食べさせてあげたい。
『それにしても、毎回の食事がこんなんじゃ俺耐えられないかも。ゴロゴロできて最高と思った頃の自分が幸せだわ。制限されればされるほど味の濃いものが欲しくなる。最後に食べておけば良かった⋯⋯』
横に倒れている美少女キャラらしきものが、メッセージの後に送られてきた。
これは何なのかと疑問に思ったが、それよりもまるでこれから死に行くような不穏な文で大丈夫なのかと心配になった。
とはいえ、そのことじゃなくても姫宮もこれから先やっていけるのかという不安は常にあったため、他人事ではない。
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