139 / 184

139.

「あ、いえ⋯⋯お願いします⋯⋯」 驚いた顔のまま頷いた看護師は駆け足で去った。 少しずつ落ち着いていく息を、ため息混じりに吐いた。 何故あんなことを言ったのだろう。 覚めたら忘れてしまった夢と混同しているのか。それとも⋯⋯。 「姫宮さん、大丈夫ですか?」 膝を抱え、顔を埋めていると声を掛けられた。 ビクッと肩を震わす。 知っている声だけど、怖い。 恐る恐ると怯えた目で見ると、微笑んでいる担当医と目が合った。 「大丈夫ですよ。念のため熱と採血しましょうか」 看護師から体温計を受け取り、それを脇に挟んで計っている最中、「右手を出してください」と言われ、言われた通りに出すと「チクッとしますよ」と言いながら、中指に細い針の先で刺し、ぷくっと出てきた血を指よりも小さい薄い金属製の板に乗せ、片手サイズの機械らしきもので計っていた。 鈍い痛みを後々に感じたものの、寝起きだからかもしかしたら出た熱のせいかぼんやりとしていて、些細な出来事のように思っていた。 採血の結果もぼうっとしながら聞いていると、体温計が鳴った。 脇から取ると、担当医が横から覗いた。 「微熱のようですね。もしかしたらこのまま上がる場合があるかと思います。その際には中止し、帰って頂くことになります。よろしいですね?」 「はい⋯⋯」 二日目にしてこうなるなんて。 最後までやり遂げようとしたのに、なんて情けない。 「今はひとまずこのまま安静にしてください」 「はい」 「着替えの服がございますが、お手伝いした方がいいですか?」 「いえ、大丈夫です⋯⋯」 「分かりました。着替えの服はここに置いておきます。些細なことでも構いません。何かありましたら、ナースコールで呼んでください」 「はい、ありがとうございます」

ともだちにシェアしよう!