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141.※御月堂視点
社長と呼ばれる者しか入ることが許されない室内で、机の上に築かれる書類の山を前に目を通してはサインを入れ、確認済みの山に置いていく。
「社長、業務の最中に失礼します。10時頃に予定されていました病院の院長との会合ですが、12時に変更して欲しいとのことです」
「そうか。分かった」
となると、今目の前に広がるこの書類を少しでも多く終わらせ、軽く食事をしておかないとならない。
そこで、ふと思い出した。
「11時と13時に予定は?」
「11時は、他社の製薬会社の現在進めている協同開発の話し合いで、13時は我が社の薬を提供している病院に赴いて直接話をしに行きます。ですので、今から11時までの間は何も予定はございません」
「分かった」
やはり今している書類を今日中に終わらせるためには、この時間に少しでも目を通すべきだ。
目に通した書類の束を秘書の松下が抱えて持っていくのを横目で見つつも、次の書類に目を映した。
いくばくかその作業をしているうちに目が疲れてきたようだ。目頭を押さえ、小さくため息を吐いた。
「少し休憩なさいますか?」
「そうする」
「今、珈琲を淹れてきますね」
少し離れたところにあるコーヒーマシンに向かう秘書を一瞥した後、エグゼクティブチェアの背もたれに背中を預けた。
遠くを見つめていた後、不意に机に視線を向けた。
机の一角にある写真立てには、愛し合う仲である愛賀が撮って、送ってくれた誕生日の時の大河と伶介が並んでいる写真、御月堂自身が贈ったプレゼントの完成したものと一緒に映っている写真が飾っていた。
携帯端末で見返すのもいいが、違った形で身近に感じられるのはどうかと松下の提案でこういう形に収まったが、なかなかにいい案だった。
自分の両親がこのように飾ったことがなかったために、そのようなことを思いつきもしなかった。
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