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142.※
「写真立てにして良かったですね。こうして仕事の合間に見れますし」
「珈琲です」と淹れた珈琲を机に置いた松下がそう言ってきた。
「そうだな。息抜きにちょうど良い」
流れるような手つきでカップを手にした御月堂は、一口含んだ。
「そうなんです。そばにいられなくても身近にいるように感じるんですよね。写真は最高の瞬間を撮っているわけですし、それからその時のことを振り返れますし!」
握り拳を作っては力説するといういつもの調子の松下に、またかと思ったが、確かにとも思った。
今回は特に撮影者が愛賀であることが大きいのだろう、何かと敵意を向けてくる大河にこのような表情を向けられたことがなかった。
この表情だけでも母親が大好きだということが伝わる。
一番血の繋がりがある家族だからこそ、仕方ないことだと口にもしたことがあったが、流石に傷つく。
いつしか仲良くなれれば。いつしか血の繋がりがなくとも家族になれば──。
愛賀はそこまで望んでいるのだろうか。
たまにしか会えない相手に、もしかしたらこれから先、無理を強いてしまうかもしれない立場に、そこまで含めて望んでくれるだろうか。
大変な立場を自分に全て請け負ったとしても、このような立場の人間に、いいと言ってくれるだろうか。
寂しい思いをさせたくはないが、恋人という関係から一歩踏み出したい気持ちはあった。
そうしたら、自分だけの愛しい存在に、というのはあまりにも欲深く、自分勝手だろう。
やはり、そう考えると気軽になれるものではない。
「社長? 何か心配事が?」
「いや⋯⋯」
このようなことを一人で悶々と考えていても答えには辿り着かないだろう。
松下でもいいから助言を求めた方がいいかもしれない。
しかし、どうと言えば。
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