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「⋯⋯お前は私が大河の父親になる可能性があると思っているのか?」 「ええ、はい。立場的に姫宮様と夫婦になるのは難しいと思われているようですが、私個人的にはそうなって欲しいと思っております。そうしましたら、伶介共々これからも仲良くできますからね」 「本音はそれか」 「それはそうですよ。伶介がよく大河君の話をしているのですが、それがもう可愛くて可愛くて⋯⋯私の話をすることが少なくなったのは悲しいことですが、それはある意味成長だと思ってその話を一言一句聞き逃さず、聞いていてましてね⋯⋯あ、その時のを録画しているのですが、観ます?」 「今はいい」 少し気になりはするが、ひとまず今はいい。 松下には微々たる表情でも読み取れてしまうようで、まるで人の心を読んでいるようだった。 もしかしたら、前よりも表情が現れているからもあるかもしれないが。 愛賀が控えめでありながらも笑った表情を見ると、心が浮つくような感覚がある。 反対にこちらが笑みと呼べるものを見せると、愛賀もそれに応えるように似たような顔を見せる。 そう考えると、さっきからの言動を含め傍から見たら、こういうことを考えていると分かるのかもしれない。 松下のなせる技が大いにあるかもしれないが。 「それで御月堂様は姫宮様と今後どう──」 コンコンと扉を叩く音が聞こえた。 途端、こちらに一礼した松下が「はい」と言って、早足で扉の方へと向かった。 松下が少しばかり扉を開け、相手と話している。 松下が壁となって見えないと思われていたが、少し見えた相手に目を鋭くさせた。 確か、あれは──。 話し終えた松下がその相手に一礼した後、こちらに向かってきた。 しかし、その際に見た顔が強ばっているように見えた。 社内の人間が報告にやってきた時とは違う表情に、違和感を覚えた。 何なのか。 言いようもない緊張感で御月堂もまた強ばらせていると、戻ってきた松下が口を開いた。 「会長がお呼びとのことです。主に姫宮様のことで」

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