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151.※
そうか。報告がいくようになっているから、故意にそうならないよう愛賀が自ら赴いていたというか。
なんということだ。恐らくまだ愛賀は外を歩くことが難しいはずだ。安野からも大河の病院の付き添い程度しか外に行かないと報告を受けている。
報告を貰えれば安心できると思っていたのが仇となってしまった。
そこまでして治験なんかに協力という名の強要して、愛賀に利益なんてものはないのに何をゆすりかけられたのか。
1ヶ月ほど前に会ったが、その時はいつも通りの様子であったが、まさかあの頃からすでにしていたのか。
そうだとしたら、何故少しの変化に気づかなかったのか。周りも普段と変わらない様子だったから何も気づかなかった。
なんて自分は愚かなのか。
このふつふつと湧き上がる怒りはどこにぶつけたらいいのか。
「⋯⋯っ、⋯⋯けい、さま⋯⋯?」
「愛賀っ」
目を開けることもままならなそうに瞼を震わせ、半分ほど開けた愛賀に、眉を寄せた。
「熱を出したと聞いた。調子はまだ良くないだろうから、このまま安静にしてろ」
「⋯⋯慶様、ですよね。⋯⋯どうして、ここに⋯⋯?」
「どうして、というのは⋯⋯」
先ほど主治医が意識の混濁があると言っていた。御月堂に来るように言ったのも覚えてないのかもしれない。
「⋯⋯私、治験をしていて、それから⋯⋯。どうして、熱を⋯⋯。こうなったら、私、使えないということですか。⋯⋯私、まだなんにも役にたってない⋯⋯何にも⋯⋯慶様にも⋯⋯っ」
熱で潤んでいた瞳がやがて一筋の涙となり、零れ落ちる。
「私⋯⋯やっぱり、身体を差し出すことしか能がない⋯卑しくて、愚かなオメガ、なんです⋯⋯っ」
「そんな訳がないだろう」
怒りが混じった口調でやや言葉を被せた。
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