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152.※

「どんな性であっても等しくあるべきだ。オメガだからとはいえ誰かにその尊厳を踏みにじられていいというわけではないだろう。愛賀は望んでそうしたわけではないだろう。そうするしかなかったのだろう。だから、これ以上自分自身を卑下するのではない」 は、と息を苦しそうに吐いて、うっと呻き声にも似た言葉を混じえて何かを言いたそうにしていたが、また一つ涙を零すだけで何も言ってこない。 「⋯⋯すまない。熱が入ってしまっていた。今こんな時に話すことではなかったな」 頭を撫で、その手を滑らせるように頬に添える。 熱い。 思っていたよりも感じる熱にさらに眉の皺を刻んだ。 反対に愛賀は目を細め、まるでそうされるのが嬉しいといった反応を見せる。 「⋯けい⋯⋯さま⋯⋯」 やっとと言った口調に、されど幾分か苦しさよりも嬉しさを滲ませた声音だった。 やはりこうされるのが嬉しいのか。 自分が熱を出した時は身の回りの者達もこういうことはしなかったと思われる。 ただ機械的にしていたという記憶しか。 このぐらいのことで少しでも苦しみが和らぐのなら、愛賀の気が済むまでしてあげたい。 「慶様⋯⋯お仕事は⋯⋯」 「こんな時でも人のことを気にしなくてもいい」 「⋯⋯迷惑⋯⋯では⋯⋯」 「迷惑なわけがない。むしろ、こういう状況でも来て欲しいと望んでくれたことが嬉しく思う」 「⋯⋯」 先ほどの問いに愛賀自身呼んだ記憶がないだろう。しかし、小さく息を吐いた愛賀が口元を緩ませたのは自分の目の錯覚だろうか。 「寝るのも辛いかもしれないが寝た方がいい。寝るまで、いや容態が安定するまでいる」 「⋯⋯ここに、いたら⋯迷惑では⋯⋯」 「適切な処置をしてもらえる。だから安心して寝ろ」 「⋯⋯はい」

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