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『愛賀と追尾した者諸共何も無く良かったと思う。結果的に何事も無く良かったといえるが、もしもの際と考えるとやはり袋田に頼むべきだったといえる。だが、それ以外の策で対処したのなら、今回の処罰はなしとする』 『寛大な御心、誠に感謝致します』 『愛賀のことだが、何日間か入院という形にさせる。だからこの事は誰にも言わずにいろ』 『承知しました』 安野から送ってくるまで多少の間があった。思わず口を滑らせてしまうことを自覚しているのだろう。言ってしまった際には開き直って具合が悪いことを伝えるしかない。 その責任も取ることにしよう。 後に続いてメッセージが送られて来ないことから、携帯端末をインサイドポケットに入れた。 愛賀を見やると眉をさっきよりも潜め、苦しそうな呻き声を上げていたが、何気なく指先で頬を撫でるとふっと表情が和らぎ、短い吐息を吐きながらも寝息らしきものを立てていた。 少しでも安らければと反対の手で汗で濡れている髪を撫でてみると、口元を少し緩めた。 普段も頭を撫でられるのが好きなようで、ぎこちない手つきでありながらもそうしてみせると愛賀は照れたような笑みを見せる。 頭を撫でる行為を誰かにされた記憶はなかったため、何故そのような反応を見せるのかと疑問に思っていたが、愛賀がそのような顔を見せた時、良いことだと思い、時折するようになった。 今もこれで気も紛れればと思う。 しばらくの間、撫で続けているのであった。

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