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158.※

「⋯⋯慶様、好きです⋯⋯」 少し躊躇いがちに掠れた声で紡いだ。 「慶様、好きです。好きです⋯⋯」 自信がついたようにさっきよりはっきりと言い、徐々に笑みを深める愛賀の頬に触れると、愛賀はその手に自身の手を重ね、頬を擦り寄せた。 「⋯慶様、大好きです。⋯⋯愛してます」 「ああ、私も大好きだ。⋯⋯愛してる」 なんて心を躍らせるものなんだ。 その言葉を愛しき者に告げただけで、こんなにも暖かい気持ちになるとは。 その言葉を告げた時、愛賀はより一層笑みを深め、その言葉を心に留めるように目を閉じる。 涙で濡れたまつ毛が朝露のように煌めき、赤く染まる頬とも相まって普段とは違った表情を見せる。 心に留まるような芸術品を見た時のような、はっと息を呑むような美しさと同じような感覚だった。 心を乱されるような悲しい涙を流させたくないとは思うが、この表情をできれば違った形で見たいという欲を孕ませた。 いつまでも見ていたいものではあったが、今愛賀は病人だ。適切な判断をせねば。 「愛賀。私はここにいればきちんとした治療を受けられると思い、そのような選択肢をした。だが、ここに留まれば愛賀を苦しめている面もあることに気づいた。だから、安全である家に帰る方が良いと思っているのだが、愛賀はどうなんだ」 「⋯⋯え⋯⋯ぇ⋯⋯っと⋯⋯」 再び瞼を開いた愛賀は、迷うように視線をさ迷わせた。 愛賀としてもここよりも落ち着けて信頼できる世話係がいるのだから、家にいる方が良いと思ったのだが。 本来の治験として留まる期間が決まっていたことに気が引けるのだろうか。そのようなことも気にしなくていいのだが。

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