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「治験のことも全く気にしなくていい。そのことに関しては話をつけておく」 「あ⋯⋯申し訳ございません」 「謝罪は要らん。それよりも愛賀は家に帰りたいのか」 「⋯⋯私は⋯⋯帰りたい、ですけど⋯⋯」 「けど?」 「⋯⋯安野さん達にも、大河にも⋯⋯心配させてしまうので⋯⋯」 元気に送り出した相手が帰ってきたかと思えば、熱を出して辛そうにしている姿を見て、誰も愛賀の身を案じている者からすれば、より一層そうなるのは自然なことで、だから心配させたくはないのは分かる。しかし。 「そうだな。皆揃いも揃って心配するな。だが、ここぞとばかりに世話をしてくるだろうな。お前が普段遠慮しているものだから、世話のしがいがないと安野がぼやいていた。この機に安野達に世話を焼かれてはどうだ」 「⋯⋯そんなことを⋯⋯」 小さく呟いたきり、愛賀は黙ってしまった。 まだ何か納得してない部分があるのだろうか。 と、愛賀は顔を上げた。それも目を細めて笑って。 「⋯⋯そうですね。皆さんに世話を焼かれます」 御月堂も笑みを滲ませた顔を見せ、その頭を軽く撫でた。 「そうしてくれ」

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