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「また人の心配をしているのか。愛賀が心配がすることではない。それに容態が安定するまでそばにいると言っただろう。だから、何も気にしなくていい。私がただいたいだけでは理由にもならないか」
立場上、御月堂になかなか会えないのが当たり前だった。
それを仕方ないと割り切っていたが、やはりその温もりが欲しいと思ってしまっていた。
欲張ってはいけないというのに。
しかし、 御月堂も少しでも姫宮のそばにいたいと思ってくれている。
だとしたら、言うべき言葉は。
「⋯⋯慶様がいてくださって嬉しいです。私も慶様にいて欲しかったから⋯⋯」
ちょうど頭を傾いていたのが、御月堂の心音が聞こえる側だった。
だから、先ほどよりも鼓動が早まっているのを耳で感じていた。
「⋯⋯つい話してしまうが疲れるだろう。今後は黙っておく」
姫宮の返事を待たず、宣言通りに御月堂は押し黙った。
本当はここぞとばかりに御月堂と他愛のない話をしたかったが、やはり具合が悪い今は少し話すだけでも体温が上がっているように感じ、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないとそれに従った。
それだけのせいではないかもしれない、けれども。
住人との隔てる自動ドア前にある集合玄関機に暗証番号を入力し、開いたドアを御月堂と入っていき、エレベーターホールへと向かった。
姫宮が住む階を押し、少し待った後、開かれた先へと足を踏み入れた。
エレベーターという密室空間。この浮遊感は上へと昇っていくからかもしれないが、御月堂と二人きりになったからでもあるし、初めて大河に会いに行った日のことを思い出すからかもしれない。
御月堂とエレベーターで二人きりになる度に思い出してしまうなんて。
「着いたぞ」
そう言った時、ある扉の前にいた。
いつの間にか住んでいる部屋の階に降り、来ていた。
視界に映った部屋番号。見慣れているものだった。
その部屋番号の下にあるインターホンを御月堂は押した。
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