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「大河、どうしたの⋯⋯?」
「あ、恐らくですけど、ママさまを熱を出させたのは御月堂さまのせいだと思っているんじゃないんですか? あとついでにお姫様抱っこしているのも気に食わなさそう」
「それは流石に言いがかりだろう。それ以前に大河は私のせいで母親が具合が悪くなったと思っているのか?」
改めて御月堂が訊ねてみると、大河はうんっと大きく頷いて、姫宮にしがみついたかと思うと御月堂のことを睨みつけていた。
これは流石に弁明してあげなければ、御月堂の立場がない。
こうなったのは結局自分のせいだから御月堂は関係ないと大河に教えてあげなければ。
と、口を開く前に御月堂が言った。
「大河。この機会に言っておくが、私は愛賀のことを具合が悪くなるまで酷いことをすることは一切ない。もし仮にそのようなことをしたならば、こうして愛賀が歩くことさえ難しいと横抱きにして連れて帰って来ない。逆にこうなってしまったことに自分に怒りを感じるほどだ。これは想いやっているからこその行動だ。お前も分かっているだろう」
「⋯⋯⋯⋯」
険しい顔をしていた大河は次第にさらに眉間に皺を寄せて、首を傾げた。
「何を首を傾げている」
「いやだって、御月堂さまの言うことが回りくどい言い方をするんですもの。もう少し子どもにも分かりやすい言い方をしたらどうですか?」
「分かりやすい言い方というのは⋯⋯」
「大好きだから、ママさまに酷いことはしないって言えば分かるんじゃないんですか〜?」
「でしょう? 大河さま」と話を振ると眉間の皺が取れた大河が頷いた。
「⋯⋯小口で分かったのならそれでいい。それよりも一旦、愛賀のことを寝かせてあげたいのだが⋯⋯」
「あー、そのままでいるつもりかと思ってましたー。はいはい、じゃあ大河さま一旦離れてくださいね」
素直に離れた大河と御月堂がその場に立ち上がり、「邪魔するぞ」と言い、靴を脱いだ御月堂がそのまま姫宮の部屋へ案内する小口の後を着いて行った。
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