「いえいえ！ そんなことはありませんよ！ ちょうど御月堂様に訊きたいことがございまして。姫宮様に食べさせるお粥の具について話し合っていたのですが、御月堂様のところは何を入れてましたか？」 「お粥、か⋯⋯」 「まさかのトリュフを入れてたり⋯⋯？」 「手軽に食べれる料理にそれを入れていたのなら、私達と格が違いますね」 「トリュフは食したことはあるが、具合が悪い時では口にしない」 「うどんというわけでもないですか？」 「それではないと思われるが⋯⋯」 なにせ、遠い昔の記憶であり、その時食べたものを逐一覚えていられない。 普通は覚えているものだろうか。 「特にこれといったものを入れてないかもしれないな」 「シンプルオブザベストといったところですか。あえて何も入れないのもアリかもしれませんが⋯⋯」 「寂しくもありますし、朝から何も食事をしてないとのことでしたから、やはり何か入れた方がいいんですけど⋯⋯」 「ネギがこういう時には良いです」 「梅干しには、疲労回復に効果てきめんですよ」 両者とも譲らず、静かに火花を散らしていた時だった。 「ぅん、んっ」 バンッバンッと大河が台を叩き出した。 皆があまりにもすぐに決めず、痺れを切らしたのかと思ったが、その強調するように叩いているもののを見た時、なるほどと思った。 「もしかしたら、大河は竹輪を入れたいのか」 「⋯⋯⋯⋯」 御月堂が代わりに答えてくるとは思わなかったのか、はたまた気に入らないのか、半ば遅れ気味に頷いた。 「面白いものをチョイスしますねー」 「意外と合うかもしれませんね。それを入れてみましょう」 竹輪に玉子、ネギを手に取って料理に取り掛かろうとしていた。