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「その役目、私も負ってもいいだろうか」 「え?」 「何気なく材料を選んでいるじゃないですか」「もうこの際これでいいですよ。早く食べさせましょうよ」と口論になっていた三人が一斉に振り向いた。 「今、何と?」 「愛賀に食べさせるものだろう。だとしたら私もその責務を果たしたいと思ってな」 「ちなみに料理経験は?」 「⋯⋯無いに等しい」 「だとしたら、難しい話かもしれませんが⋯⋯」 言い淀んでいた安野が不意ににっこりと笑った。 「やってみましょう。私達も手伝いますから」 「そうですね。この機にやってみるのもいい経験になりますね」 「姫宮さまの口に合うといいですねぇ」 安野と江藤はその機になってくれたが、小口は相変わらず一言余計だった。 自分一人で作り上げるのではないから、愛賀の口に合うものが作れるはずだ。 安野が「コート預かりますよ」と言い、渡し、ネクタイをポケットに入れ、シャツの袖を捲っていると、視線を感じた。 した方に目を向けると、こちらを見上げる大河の姿があった。 眉を僅かに寄せ、無表情かと思われたその顔にどことなく不満そうな表情を覗かせる。 「⋯⋯なんだ」 「⋯⋯」 一拍遅れて大河がゆっくりと口を開ける。 自分も含め、心療内科医にですら口を開くことがなかったというそれに、驚きを隠せずにいたが、大河が言う言葉を待った。 「⋯⋯っ、⋯ま⋯⋯ま⋯っ」 御月堂にとっては初めて聞く言葉を大河はようやっとといったように言った言葉と共に小さな手を主張するように目一杯上げていた。 しかし、どういう意図で同じ動作をするのか分かりかねない。 「それはどういうことなんだ」 「あー、あれでしょ。御月堂さまが姫宮さまにお粥を作ってあげるって言ったから、大河さまも作りたいって言うんでしょ」 「⋯⋯そうなのか」 「⋯⋯」 改めて訊くと頷いて、自分もやると言わんばかりに背伸びして台所に手を伸ばそうとするのを、「危ないですよ」と安野が手で制し、「私、洗面所から踏み台持ってきますね」と江藤が颯爽と取りに行った。 すぐに持ってきた踏み台に大河は乗り、袖を捲って手を洗っていた。 その後に続いて御月堂も手を洗った。

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