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171.※
ネギも竹輪と同様の結果になったことも、安野の分かるぐらいの気遣いの言葉を掛けられたことはさておき、江藤が準備してくれた土鍋に竹輪を小口の手伝いの元、大河が入れる。
「このぐらいでいいですかね」と呟いた江藤が溶いておいた卵を回し入れた。
ぐつぐつとした鍋の中、段々と卵がご飯と馴染み始めた頃。
「大河様、また手伝ってもらえますか?」
江藤がそう声を掛けた時、頷いた大河はネギを入れた。
ほどなくして、火を止めた江藤はスプーンで掬い、ふーふーと吹きかけた後、口に入れた。
「このぐらいで大丈夫そうですね。完成です」
こちらに笑いかけた時、どっと疲れを感じた。
ほぼ手伝ってもらったものの、初めてすることだったため、いつの間にか力が入っていたのだろう、思わずため息が漏れそうだった。
「このまま持って行ってください」
「ああ」
土鍋をお盆に置いてくれた江藤から受け取ろうとした時、大河がここぞとばかりというように背伸びをしてまでこちらに両手を差し出していた。
「大河さま、落としたらせっかくの料理が台無しになりますから、手を出しちゃダメでしょ」
「そうしたい気持ちは分かるが、ここは私に任せてくれないだろうか」
「⋯⋯」
サッと下ろした大河が、驚くぐらいに頬を膨らませていた。
分かりきっていた反応に、されどここは譲るわけにはいかない。
互いに何も言わず、大河は睨みつけるように見ていたが、「そんなことをしてないで、姫宮さまがお待ちしているんじゃないでしょうか」と小口に言われたことで、仕方ないといったように大河の方から目を背け、部屋を出て行った。
「ほんとっ、世話が焼けるお子さまですよ」
呆れたとため息を吐く小口はその後を追うのを、御月堂は江藤から作ったものを受け取り、先に行って扉を開けてくれていた安野に軽く礼をした後、愛賀の部屋へと向かった。
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