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173.※

「⋯⋯あーん、してくれるの?」 大河が頷いて、再び催促していると愛賀はそれを口に入れた。 「美味しいよ、ありがとう大河⋯⋯」 力なく笑うと大河は母親の役に立てて嬉しいといったように身体を跳ねさせ、そしてまた同じ動作を繰り返した。 初めて見たようなその光景にそれは何なのかと観察しているうちに、やりたいという欲が出てきてしまった。 しかし大河の邪魔するような形になってしまったら、それこそ反感を買うことになる。 今回は見送るしかない。 「⋯⋯いっぱい食べて欲しいのは分かるけど⋯⋯一旦待ってね⋯⋯」 口に入れていたものをゆっくりと咀嚼していた愛賀が、小さくふぅとため息らしきものを吐いていた。 恐らくそこまで食欲がないのだろう。 だが、大河が嬉々としてくるものだから断り切れず無理して受け入れているといったところだろう。 ここはさすがに言ってやらねば。 「大河。食べさせたいのは充分に分かるが、そろそろ薬を飲んで寝ないといけない。、もうそこまでにした方がいい」 「⋯⋯⋯⋯ま⋯ま⋯⋯」 俯いた後、母親の方を向いて何か言いたげにたどたどしく呼んだ。 そんな息子に対して困り笑いを浮かべた。 「大河、ありがとう⋯⋯。大河もまだ夕ご飯食べてないでしょう⋯⋯。ママは大丈夫だから、いってらっしゃい⋯⋯」 慰めるように頭を撫でる。 小さく口を開け、何やら考えている様子の大河であったが、やがて小さく頷き、土鍋にレンゲを置くとゆっくりとした歩みで出て行った。 さっき台所で見た駆け出した時とは違うその小さな後ろ姿はどことなく寂しく感じられた。

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