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174.※
「⋯⋯あれで大河は納得したのか」
「⋯⋯一応、行ったからそうかと思います⋯⋯。まだ居たそうでしたけど⋯⋯」
そう言う愛賀も大河と同じような寂しそうな顔をしていた。
愛賀、と思わず声を掛けようとした時、ゆっくりとした口調で話した。
「先ほどはありがとうございました。大河からああやってくれるのは嬉しいのですけど⋯⋯やっぱりいつもより食欲がなくて⋯⋯見せてはならないものを見せるところでした⋯⋯」
やはりそうだったのか。
あの時微々たるものを見逃さなくて良かったといえる。
「そうか」と返事し、お盆を取り上げた。
「今、薬と水を持ってくる」
「慶様⋯⋯」
「なんだ」
「⋯⋯⋯」
愛賀が困ったように眉を下げ、そのまま目線も下げてしまった。
一体急にどうしたのだろうか。
と思ったのも束の間、大河が去った時の愛賀の顔を思い出した。
もしかすると。
「あの、すみません⋯⋯なんでもないです⋯⋯」
「愛賀」
「はい⋯⋯」
「今の状況でより躊躇しているのだろう。大丈夫だ。すぐに戻ってくる。だからそんな顔をするな」
段々と目を見開く。
瞳孔までもがはっきりと見えるぐらいの驚きの感情は恐らく、自分が分かるぐらいにそんな顔をしていたのかという感情のように読み捉えた。
愛おしい、と苦笑にも似た目を細めて見つめた。
「行ってくる」
「はい」
「まだ心配であるのなら、その傍らに丁寧に畳んである私の上着でも抱きしめるでもなんでもしていもいい」
「⋯⋯っ」
瞬間、先ほどよりも頬を赤らめ、恥ずかしそうな顔を下に向ける愛賀の頭をゆっくりと丁寧に撫で、部屋を後にしたのであった。
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