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元々小野河が何故、姫宮に接触し、大河を産むことをし、連れ去ったのか。ニュースによって明るみに出たことで嫌でも分かってしまった。
同時に一緒にいる時は気にも留めなかった小野河の素性が、そんな大きなものだとは知らずに過ごしていた自分があまりにも世間を見ようとせず、浮かれていたことを恥じた。
「それともう一つ。代理出産の方には事細かな検査をするようにしていたはずです。⋯⋯そうだろう、あ⋯⋯姫宮」
「はい。⋯⋯病気のことは特に念入りに聞かれましたし、検査もしました」
「では、何故未成年にはそぐわないところで働き、その上虚偽記載をしたのですか」
改めて問われたものに緊張が走る。
いつしか隠し通せないもの。それが今だったのかと思うが、はたして正直に話しても良いものだろうか。
正直に話せば分かってもらえるという同情は皆無に等しいとは思っている。だったら、ただ単にそうなった経緯を言えばいい。
自分の言葉で伝えたいことを伝えたかったのだから。
「⋯⋯身の上話を少々話しますが、私は中学の卒業と同時に家出しました。さまよってうちにそのお店の方に声を掛けられ、最初のうちは断っていたのですが、強制的に連れ込まれ、その流れのまま労働させられていました。⋯⋯オメガ専用の違法であることは知らずに」
「そのことが本当ならば、代理出産の件よりも前に被害者だったというわけですか」
「そう、なるかと⋯⋯」
「確かに貴方が働いていた店は違法だと摘発され、今は無いようですが、それで同情心を煽ったつもりですか」
「いえ、そんなことは⋯⋯。ただ事実を述べたままです」
そう、と会長は考えるように少しの間、目線を外した。
「それと虚偽記載のことですが、それは申し訳ございません。書類関係のものは斡旋してくだった病院関係者に任せていたもので、そのように記載しているとは存じ上げませんでした」
「⋯⋯何故、そのようなことに」
「そういうものだと思っていたからです。ただ無知である要因で信頼を欠けるような行為をしてしまいました。謝罪してもどうにかなる問題ではありませんが、謝罪させてください」
深く頭を下げる。
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