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覚悟。
自分自身にかかった費用を違った形で支払うと口にした時とは違う、言葉の重み。
オメガという存在は、世間からは卑しく疎まれ、奴隷という言葉が似合うぐらい限りなく身分が低いものだった。
そんな地を這うことを強いられていた者が、長い間誰もが羨む高貴な第二の性と家柄で選ばれた人達と同等と同時に責務を課せられる。
オメガではなくともごく一般家庭で生まれた姫宮にとっては、想像すらできない非現実的なことがこの先起こることが予測される。
不安がないと言えば嘘になる。このような身分の人間がたとえ周囲の人間が認めてくれようとも、世間がどう思うのかと考えたら、身体中が震え上がる。
けれど。こんな相手でも御月堂がまず認めてくれた。尊き相手がどんな人間であろうが等しくあるべきだと言ってくれた。
だから、それに応えてあげたい。
「私には計り知れない想像があると推測されます。今まで培ってきた経験では意味を為さないほどの重責に正しい判断が出来ないかもしれません。ですが、代々ここまで繋いできた御月堂家もそうであったと思います」
「⋯⋯その根拠は?」
「御月堂社長の依頼を受けるきっかけとなった、元々アルファ同士ではなかなかお子に恵まれないという点です。それはどの性も同じ悩みであり、重い責任かと思われます⋯⋯」
御月堂のような家柄であれば重要であるが、それでもただ子どもが欲しくて、恵まれなければ自分が悪いのかと酷く責め、悩める原因となるはず。
姫宮はその手助けをしてあげていた。感謝されることもあったし、代わりの母胎でさえも上手く実らず、それで責められることもあった。
社長と呼ばれる者の隣に立つ者の地位は高いとはいえども、母親となる者の責務はどの第二の性も等しいと思った。
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