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「⋯⋯確かに良い家柄とアルファの血を引く者を迎えたとしても、その点が大きな問題になっていました。それはこの家を守るため、自分の代で終わらせないためにという責務は重くはあります」 不意に口を開いた会長は姫宮のことを見ているようだったが、その視線はもっと違うところを見ているように感じた。 しかしそれも束の間、こちらに視線を合わせた。 「第二の性ばかりに囚われていて、そういった点を見落としていました。母親としても代わりに産んだ経験のある者の重みは違いますね」 「あ、いえ、そんなことは⋯⋯」 「誇りなさい。そして胸を張りなさい。そんな態度でいられますと、これから御月堂の名を受け継ぐには相応しくありません」 「⋯⋯⋯ぇ⋯⋯」 それってつまり。 「華園院家との婚姻が解消され、早急に見合う相手を選りすぐったというのにことごとく断わるのですから、今まで一度も見た事のない態度に何の心境の変化かと思いましたら、なるほど、これは本当に誠心誠意のある青年という印象を受けますね」 ちらりと隣の御月堂を見る。 その際の会長を見た時、はっとした。 感情の動かなかった顔に僅かな笑みを見せたことに。 それと同時にやはり親子なんだと思わされるものだった。 そんな母親に御月堂は誤魔化すように咳払いをした。 「これでもうお分かりかと思います。話はもうよろしいでしょうか。お忙しい中、時間を取って頂き誠にありがとうございました」 「⋯⋯あ⋯⋯っ」 やや早口気味に締めた御月堂の手が腰に回され、有無も言わさず早々に立ち去ることになった。 まだきちんと挨拶をしてない。 振り向きざまに会長を見ると、先程の含んだ笑みで二人のことを見つめていた。

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