9 / 10
続 崩壊した世界で Ⅴ
今のところ判明している血を吸われた側への影響。
「丈夫になる。命令を聞きやすくなる。薄い媚薬効果。てか、このことは幻曜さん、知ってるのかな?」
「はぁ、あっ! ……ぁ、あああ‼」
媚薬効果はどういう意味があるのか。家畜が、逃げにくいようにとの身体の支配のためか。そんなものなくとも、逃がすはずがないのだが。
(血を捧げたくなるように、とかかな?)
それか、家畜同士の繁殖用か。
左手指を折り曲げて数えながら、右手は軽羅のペニスを浴衣の上から扱いていた。ざらざらしたガーゼ生地に似た浴衣に擦られ、足や腰が跳ねる。
「んん! ンう」
「ほらー。声押さえるなって。言うこと聞――聞かなくていい聞かなくていい」
「っあ、ぁ……」
太ももに跨っている歳星は少し身を乗り出し、二本の指を口内にねじ込む。かき混ぜると、引き抜いて舐めた。
「んー。美味しい。こうすれば俺の唾液が入る量は減るよね」
「い、や! あ、ンッ。ああっ」
「濡れてきちゃったね」
先走りが、浴衣の生地に染み込んでいく。滑りが良くなり、ぬちぬちと粘着質な音が混じり始める。
「ひうっ! 歳星……刺激が、アッ、強すぎ……ッ‼ と、止め」
黙らせるように指を押し込み、舌を摘む。
「んえ」
「可愛く鳴いとけって。あ、命令じゃないよ?」
「あっ、あっ。そん、駄目……ひいっ! やだ、熱い! ああ、ああぁ」
先端を手のひらで摩ってやると、ビクビクと腰が跳ねる。
「自分から腰振っちゃって。そんなに気に入った? 浴衣の摩擦」
「ぁああああ……! 先端、やだ、あ、あん!」
プツッと甘いにおいを垂れ流す汁が溢れてくる。それは吸血鬼の頭を殴りつけた。
(うわ。すっごくいいにおい。血液に並びそう)
「歳星! やめ! い、イきそう……ッ。止めて、くれ。歳せ、ングッ」
軽羅が何か言った気がするが、興奮で頭に血が上っている歳星の耳には届いていなかった。指を奥まで突っ込むと、どぷっと溢れてくる。
いやいやと首を振るが、吸血鬼には「見えていない」。
「あん、ふ、う……。奥、に、ぁ」
「あー。くらくらしてきた」
指を引き抜くと、じれったいとばかりに唇を重ねる。軽羅の背中が大きく跳ねる。
「ん! あっ」
「んん……。甘い。もっと体液垂れ流して。足りないよ」
「これ以上、飲ませ、っるな!」
「家畜」が両腕で可愛く抵抗してくるが、腰布で縛って頭上で固定する。
「歳星!」
ただでさえ力で敵わないのに腕を縛られ、恐怖と絶望に締まる顔に興奮してしまった。手の動きを速め、横腹をくすぐってやる。
「うっ‼ あ、アア‼ やだ、そんな。歳星……ッ」
声が枯れてきたのか、爆音が出ないことに歳星はほっとしたように、だが魔女のように笑う。
「あは。くすぐってもえろい顔するだけになっちゃったね」
右手は固定したまま、左手は身体中を這いまわる。
「ンッ! うっ」
たまに指が突起に当たると、一層大きく反応して楽しませてくれた。
「やだ! あっ、駄目。イきそ……ッあ、あ、あぁ!」
「似合ってるよ。好き放題されている姿。明日の夜もその次の夜も、俺に、俺だけに見せてね?」
爪先で甘い汁を垂らす鈴口を、円を描くように引っ掻いてやる。
「はっ、ああ! 駄目、駄目! 歳星。イっ……ああっ‼」
「イきそう? 味見してみていい?」
ぺらりと浴衣をめくり、反り立つペニスとご対面する。自身が出した液に濡れて、吸血鬼を誘うように脈打っていた。
家畜は必死に叫ぶ。
「やめ! やめろ! 歳星ッ」
鳴き声を無視して、一気に喉奥にまで咥える。シェイクを吸うように強く吸い上げてやると、軽羅はあっさりと果てた。
喉に直接、ビュクビュクと熱い液が吐き出される。
「―――ッ⁉ ああ! ……っ、う、あ、ぁ、ぁあ……」
数回痙攣した後、くたりと力が抜ける。
一滴残らず飲み込んだ後、歳星は幹を舐めながら口を引き抜いた。
「……あっ」
「ん。美味しかった。もう文明が戻っても、アイスやケーキじゃ満足できなさそう」
一度この甘さを知ってしまえば、わざわざお金を払って食べようとは思わない。
「はあ……」
恍惚とした表情で、ぼうっと星空を天窓から眺める歳星は、美しい白銀の精霊へと変化していた。
その足元で力なく目を閉じている軽羅。
天使と生贄。一つの絵画のようだった。
「か、軽羅」
「……」
三日間。ぶすっとした軽羅は口を利いてくれなかった。
ーーー
「貴様という奴は。唾液すっ飛ばして精液に行く奴があるか」
「だって……ごめんなさい」
正座している歳星と仁王立ちの軽羅。
ぎゅむぎゅむと歳星の頬を左右に伸ばす。
「力の振り分けは⁉ 人の質問も無視しくさって! どうなんだオイ‼」
「ふへー」
農作業の昼休み。
休憩すればいいのに女性たちは縫物や道具の修理に精を出し、男性たちは力仕事を頑張っている。恐らくヤバい生物(幻曜)がうろついているからだろう。幻曜のあいつらに対する鬼畜所業が知れ渡り、「自分もサボればああなってしまう」という恐怖を植え付けた。
なんせ今も、全裸家畜に腰掛けて畑を眺めているのだ。ありとあらゆる意味で近寄りたくない。
手を放すと、歳星は頬を摩る。
「……ごめんなさい。力の振り分けは、軽羅を好きに出来た嬉しさと美味しさですっかり忘れてた」
あんなに恥ずかしい思いして結果がこれでは、泣きそうになる。殴っても許されるだろうか。
「はあ。次は許さんぞ」
「俺も考えたんだけど。俺が悪いんじゃなくて、軽羅が可愛いのが悪いんだと思う」
「よーーーし。反省してないな?」
限界まで頬を伸ばしてやる。
「あべー」
「おうおう。良く伸びるな」
「あのー……。ボス。ちょっといいかい?」
麦わら帽子を被った大人たちが声をかけてきた。
軽羅は若干焦る。
「な、なあ? 聞き間違いかと流していたんだが、その『ボス』とはなんなのだ? 俺のことか?」
「え? そうだよ? あの吸血鬼さんがボスって呼んでたし、そこの綺麗な子も、きみの言う事聞いてるじゃないか」
んだんだと、他の大人たちも頷く。
「違うのかい?」
「違う!」
ボスって、ショッピングモールに集まった人たちのリーダー的な意味ではなく、吸血鬼のボスって意味のことか。
(くそ……。幻曜が面白がってそう呼ぶから。歳星も素直に言う事聞いてくれるしな)
二大勢力にボス扱いされていれば、第三者が勘違いしてしまうのも無理はない。
「それで、用件は?」
「今後のこと、皆で一度話し合おうと思ってさ。子ども作って人数増やすべきか、とか。仕事分担とか」
「そうじゃ! 女どもの一部が働いていないのは納得できん」
「うん?」
幻曜効果でまんべんなく働いていると思うが。身体が弱い者だって、出来ることをしている。何の不満が……
「もしかして、身ごもっている人たちか?」
暴行されて心に傷を負って妊娠した女性に、すぐに働けと言うのも。いやまあこんな世界になってしまったから、というのもあるが。
「それを話し合いたいのか」
「そうだよ。ボスや歳星くんもいい年だろ? 奥さんを探してみてはどうかな」
話し合いの日時を決めると、大人たちは解散していく。
「ふむ。歳星、お前は今の話」
どう思う? と振り返ると、歳星がマジギレ一歩手前の表情をしていた。
一瞬、凍り付く。
「さ、歳星? どうした?」
「……俺がいること知ってて軽羅に嫁さん勧めたんだよね? これって俺への宣戦布告? 暴れていい?」
黒い髪を軽く小突く。
「彼らがお前の恋心を知ってるわけないだろ! 彼らには悪いが、俺は夏拠点に移動しようと思っている。夏が来る前に」
歳星の目がうるるんと煌めいた。
「え? そうなの? ……あ。暑いの本当に駄目だったね、軽羅」
「うむ。現在でもちとキツイ」
早く山奥の方へ避難したい。暑いのは暑かったが去年もその前の年も、そこそこ快適に過ごせたのだ。綺麗な小川があって虫が多くてゾンビが極端に少ない。翼のある歳星がいるから簡単にたどり着けるだけで、ハイキング感覚で行ける場所ではない。それが、ゾンビが少ない理由。変異型なら登ってこられるとは思うが、それでもやはり平地にいるより数は少ないのだ。
歳星をロープウェイ扱いしているのは申し訳ないと思うが、相方が空を飛べて本当に良かったとしみじみする。
歳星がしみじみしている軽羅の肩をつつく。
「ん?」
翼をパタパタと動かしていて可愛い。
「夏拠点に行くなら、俺の力が必要だよね?」
「ああ! 頼りにしているぞ‼」
ハツラツな軽羅にうんうんと頷き、歳星はにっこり微笑んだ。
「じゃあ俺の要求も、飲んでくれるよね?」
「……」
蒸し暑いはずなのに、体感温度がグンと下がった気がした。
「なあ。皆に夏拠点に移動することを伝えたら、どうなると思う? ヤバいか?」
「ヤバいね」
強さ、飛行能力、狩り性能、火。吸血鬼が荒廃世界で必須過ぎる。
「幻曜がいるけど、あいつが頭ぶっ飛んでるせいで皆が頼りにしてるのって歳星だしな! その歳星を独り占めする発言だものな。そりゃ反対されるか!」
「独り占め、しちゃう?」
美形が顔を近づけてくる。軽羅は大袈裟なほどのけ反って後退った。
「外ではやめろ」
歳星がニヨニヨとおかしそうに笑う。
「あれ? キスされると思った?」
「えっ⁉ 違うのか⁉」
「え?」
「……っ、あ!」
静寂が通り過ぎていく。
片手を上げて、軽羅は背を向けた。
「じゃ、じゃあ。俺はナスの様子見てくるから」
「軽羅さん。ちょっと話が」
服を掴まれただけで一歩も進めなくなる。
「放せ」
「もしかして」
「違う」
「キス、期待しちゃった?」
「放せ」
「してあげようか?」
「歳星‼」
顎を掴まれると、唇が重なった。
休憩していたご婦人方が一斉に水を吹き出す。
唇はすぐに離されたが、どうしてか、名残惜しいと感じてしまった。
それを誤魔化すように怒鳴る。
「お、お前! 人前で……っ。前は恥ずかしがってたくせに!」
「顔真っ赤。かーわいー」
ぺろっと舌先を出すと、背を向けて見回りに行ってしまう。視聴率百の俺を残して。なんだあいつは、吸血鬼から小悪魔にジョブチェンジしたのか。
ひそひそと聞こえてくる。
「キスした……」
「キスしましたわ奥さん」
「金髪×吸血鬼……。イイ」
「あら。吸血鬼×金髪ではなくって?」
「乾いた生活に、潤いがっ。ありがとう神様」
……何を言っているのか分からなかったので、きっと見ないフリして話題を変えてくれたのだろう。そう思いたい。
「く、くそ」
周囲の視線に耐えきれず、顔を洗いに行った。
幻曜にまでおちょくられ、寝床に辿り着くころには精神的にふらふらになっていた。ライフゼロである。
マットに無言で倒れ込む。
「このマットも一度天日干ししたいよね」
「……」
「明日、晴れてくれると良いんだけど」
「……歳星」
「なーに?」
ごろりと上向きになると、いつの間にかイケメンが覆い被さっていた。すっかり見慣れた光景になった、見下ろしてくる歳星。
「もし、夏拠点に行くことを止められても俺は行くが。お前は……ついてきてくれるのか?」
「軽羅がいないと生きていけないからね。当然」
息を吐いて、歳星の頬を撫でてやる、彼は熱い手の甲に手のひらを重ね、懐いた猫のようにすり寄って甘えてきた。
その仕草に笑みがこぼれる。
「ふっ。可愛いな」
「惚れた?」
「どうだろうな。お前のことは嫌いではないが。恋をしたことが無いせいで、これが『好き』という気持ちなのか判断つかん」
なんせ、いきなりが同性のイケメンで吸血鬼なのだ。脳が混乱している。
歳星は額にキスを落としてきた。
「一緒にいたいとか、離れると寂しいとか。そんなことない?」
「先ほど、お前にキスされたのはふざけるなだったが。そうだな。唇が離れた、ときは。な、何故か、も、も……」
「も?」
顔を背ける。
「もっとしてほしい、と思ってしまった」
「……ふーん?」
顔を挟まれ目線を合わせられると、こつん、と額を額に乗っけてくる。
「キスする?」
「っ、いいぞ」
軽羅は自分から口を開け、少し長い舌を迎え入れた。
ーーー
静かな山奥。
だが時折、猛獣のような、亡者のような唸り声が風に流れてくる。
けっして安全が確保された土地ではないが、ゾンビが少ない場所。
大小の丸石や砂利が多い川べり。その近く。山の斜面に埋もれるようにひっそり佇む民家。きっと誰かの別荘だったのだろう。夏は毎年ここで暮らす。
初日は大掃除で終わってしまった。毎年来ているとはいえ、中は埃と蜘蛛の巣まみれだったのだから。
軽羅は足首を川に浸けて伸びていた。
「あっづ~」
カラッと晴れた青空は雲一つなく、梅雨の終わりと酷暑の始まりを告げていた。
ショッピングモールの生き残り全員に引きとめられ、梅雨の間は頑張って平地に留まっていたのだが限界を迎えたようで。農作業中に意識がなくなった。
目を覚ますとモール内のマットの上。
すでに何人か熱中症で倒れていた為、軽羅も気をつけてはいたのだが。朝だからと油断してしまった。
しっかりとバリケードを作り、たまに様子を見に行くことを条件に、夏拠点へと移動が決定。
熱中症で倒れた時、よほど心配をかけたようだ。どこへ行くにもカルガモのように歳星がついてくる。
今も、隣で靴を脱いだ歳星が同じように寝転んでいた。
「毎年のことだが、何もする気が起きん」
「俺が養ってあげるって」
両名とも、魚を獲るために川に潜っていたのでずぶ濡れである。それでも陽射しはじりじりと肌を焦がしてくる。
軽羅は這って簡易テントまで移動し、そこでもう一度転がった。歳星もついてくる。わざわざ同じように匍匐前進をするところがちょっと可愛い。
「冗談だ。ちゃんと働くさ」
「むすー」
膨れた頬を頬に押し当ててくる。軽羅より体温の低い歳星の肌はひんやりしていて気持ちが良い。
「何をむくれている。二人働いた方が効率はいいだろ?」
「……いいよ! 働かなくて。『軽羅。何もしてないんだからえっちさせてよ』って言えなくなるじゃん‼」
真剣な顔だ。
一応。二人は付き合う、ことになった。軽羅は正直まだはっきりと好きだ! と言えないが、歳星にキスされるのも触られるのも嫌ではない。それに、ショッピングモールの皆がめちゃくちゃ祝福してくれたので、引くに引けなくなる。お年寄りたちは受け入れられないようで渋い表情だったが、「なんとなく、こうなるだろうなとは思った」と嘆息混じりに言われ、顔から火が出そうだった。
軽く上体を起こすと、後頭部を掴んで歳星にキスをする。
「んっ」
「……俺からキスすると、驚いた顔するのが可愛いな」
「は? はー⁉ 軽羅生意気! こっちがどれだけ、顔を、顔がにやけそうになるの我慢してると思ってるの!」
可愛いことを言うのでもう一回。久しぶりに優位に立てていることに気をよくするが、すぐに反撃の手がきた。
貼りついたシャツに、歳星の手が潜り込んでくる。きゅっと乳首を摘まれ、背筋がのけ反った。
「あ、いきなり……。ンッ」
「なに? 乳首立たせちゃって。こんな風にされたかったの?」
「ちが、あ、ぁ」
摘んだまま軽く引っ張られ、歳星の服を握りしめた。逃げようと突き飛ばしても無駄。声を聞かれたくなくて口を塞いだらお仕置きされる。言葉で嫌だと告げても無意味。
結局。歳星に身体を自由にさせてやるしか、軽羅に選択肢はない。
「自分からキスしてきたんだから、文句はないよね?」
「ある‼ キスしたかっただけだ」
眉間にしわを寄せた歳星がきつめに乳首を抓る。
「ひ! あ、そんな、っあ」
「強く抓られると気持ち良いんだ。可愛いね。で、なんだっけ? 文句ないよね?」
「はあっ! あ、やめ。ん、歳星……」
くにくにと揉まれるように弄ばれた。
「ん、あ」
「返事は?」
「おま、卑怯……んっ、ああ、あ。だめ……」
歳星が満足する答えを言うまで、敏感なところを責められ続ける。
川のせせらぎに嬌声が混じる。すっかり歳星の指で感じるようになった軽羅の下半身は立ち上がり始めていた。それを、歳星が目ざとく見つける。
「俺で感じてくれているようで嬉しいよ」
「アアッ」
ズボンの上から優しく握り込み、揉んでやると腰が小刻みに跳ねる。
「あ、ん、ああ」
「素直になりなよ。ま、俺は楽しいからいいけど」
「同時に、触っ……あ、あ、うあ」
「乳首とセットで触れられると気持ち良い?」
軽羅が太ももで歳星の手を挟んでくる。この程度で動かせなくなるわけないが、邪魔なので股を強引に開かせる。ズボンを履いていても恥ずかしいのか蹴ってこようとする。
「歳星!」
「生意気なことすると、こうだよ」
乳首から離れた手が、ズボンに入り込む。長くてきれいな指は、直接軽羅のモノを包み込んだ。
「あ! やめろ‼」
直で触られるにはまだ抵抗があるのか、服を引っ張ってくるが、濡れ始めている先端を摩ってやるとすぐに手が離れた。
「んん、やだっ」
「先っぽ好きだよね。玉はどうかな?」
「やめっ、あ、う」
付け根をくすぐってやると、じわっと汁が溢れてくる。もう片方の手で乳首も転がしてやると可愛く鳴き出す。
「っぅ、う、んんん。や、あ、もう……」
「で? 文句ある?」
「いやだ。んあ、あ、ぁあ」
「軽羅」
耳元で囁かれる。
乳首を押し込まれ、ぶんぶんと首を左右に振った。
「……な、い」
「そ。じゃあ、好きにさせてもらうね」
「あ、やだ……。こんな、場所、で」
結局こうなる。口で何を言っても変わらない。ほぼ選択肢無く身体を触られているというのにそこまで不快感が無いのは、普段、彼が軽羅のためにしっかり働いてくれているからだろう。
仮とはいえ恋人。
軽羅の心は複雑なままだったが快楽に流され、徐々に受け入れ始めていた。
川の水なのか汗なのか。雫が毛先から落ちる。
少年たちは絡み合う。
「歳星は?」
「ん?」
「お前はいつから俺を、気にしてたんだ?」
「あー」
改めて訊ねられると気恥ずかしいのか、無意識で先端を親指の腹で擦る。
「ひぐっ。ああ、も。そこばっかり……」
「好きでしょ。……そうだね。一緒に暮らし始めるようになってからかな。避難所ではうるせぇなこの子としか思わなかったし。いや。そのころには惹かれていたのかな。ごめん。あんまり覚えてないや」
「……そう、か」
薄く笑う軽羅。胸が高鳴ってしまう。
「なーに笑ってるの?」
「好きになってくれる人がいるなんてな。……嬉しいぞ」
汗だくの笑顔。
ムラムラと虐めたい欲が同時に噴き出す。
汁を絡めた指を、尻穴の方に持っていく。トン、と穴を叩いてやれば、腰が大きく跳ねた。
「おまっ。ばか‼ そこは駄目だ!」
「ちょっと指入れるだけだって」
「許可出来ん!」
銀ナイフの鞘で歳星の頭を叩く。痛みはないだろうが本能が苦手意識を発して、軽羅を押さえつけていた手が離れる。その隙を逃さず距離を取った。
「……またそれ(銀)かよ」
「ふう。手放せんな」
お守りのようにナイフを抱き締める姿に、非常に腹が立った。
神速で引っ手繰る。
「あ、おい‼」
「分かった。挿れないから触らせて」
「返せ!」
「はい」
「……」
あっさり返され、勢いがしぼむ。
「あ、ああ」
「続きしよう。軽羅も、身体火照ってるでしょ?」
「お前のせいでな……」
ナイフを床に置くと、歳星の手が太ももを撫でてくる。
「くすぐったい」
「気持ち良い、の間違いじゃないの?」
そのまま指がズボンの隙間から入り込んでくる。
「へ、変なところからお前……」
「嫌なら脱ぎなよ」
「ん、ばかっ。くすぐったいって、ひゃ、ぁ」
つんつんと先端をつついてやる。ぬめりを帯びた汁がとぷっと溢れ、歳星の指先を濡らす。
「先ばっかり、やめ」
「そう?」
手を抜くと背後に回り、両脇の下から手を差し込んで胸を揉む。
「ひう!」
先ほどいじめた方の乳首だけ、固くなっていた。
「あっ! あ、胸、あ、んん」
「こっちだけ尖らせて、やーらしー。軽羅」
「はっ……あ、そん、ぁ。揉むな……っ」
「ほんと、全身どこ触っても感じるよね、軽羅ってば。可愛すぎじゃない?」
両方の乳首を摘んでやると、右の方も尖ってくる。
「そこ、摘むのやだ……。あ、歳星」
「下、触ってほしくなったら軽羅からおねだりしてね? それまでは乳首を可愛がってるから」
「おま……。ん、くっ……」
自分より細いくらいなのに、胸をいじくる手を退かすことができない。胸ばかり集中していると、後ろから耳を甘噛みされた。
「ッ」
「んー。甘い」
「はあ、あ。う。胸、やめ……。ぁ」
刺激に慣れないように、歳星の指はちょいちょい攻め方を変えてくる。つま先で撫でるようにくすぐり、転がし、摘む。軽羅は自分で座っていられず、歳星にもたれかかっていた。
「ん、あ。あっ、あ! ああ、は、ああ」
「可愛い声。太ももも、もどかしそうに擦り合わせちゃって。どうしたのかなー?」
「はっあ、あ。ん、ああ」
耳元で囁かれ、余計に下半身が反応してしまう。ずぶ濡れでなければ、ズボンに大きなシミが広がっていただろう。先端は壊れた蛇口のように汁を吐き出す。
「んっん!」
「ちょっと見せてね」
「やめ……!」
ズボンをずらしてやれば、収納されていたペニスがピンっと飛び出してくる。透明な汁に塗れたソレを見て、意地悪く耳を舐めた。
「こんなに漏らして。はしたないなぁ。口では嫌がってるけど、本当は気持ち良いんでしょ? 認めちゃいなよ」
「あ、見るな……あ。んん。やだ」
「んふ」
胸から手を放してやる。尖った乳首は貼りつくシャツを内側から押し上げていた。じっくりと観察される。腕を押さえられ、胸も下も隠せない。
「あ、やだ。こんな。恥ずかし……!」
「良い眺めだよ。写真に撮っておきたいくらい」
「はあ……ん」
熱い息を繰り返し、項垂れる様をたっぷり視姦してやる。
身をよじらせることしかできない彼に、庇護欲めいたものまで湧き出す。
丁寧に寝かせると、シャツを捲り上げて乳首に吸いつく。
「いただきまーす」
「ッ! ああ……」
顎をのけ反らせてもどかしそうな声を上げる軽羅に、吸血鬼はどんどん気分が良くなっていく。
ちゅうちゅうと吸っていく。母乳など出るはずはないが、不思議と甘みが舌に伝わる。
(……? なんでだろ)
「ふ、あ。あ」
舌を這わせると、軽羅の身体がビクビクッと震えた。
「ああ!」
「え? ……もしかしてイった?」
「……っ。ぁ……ぅ、あ」
軽羅は必死に、だが弱々しい動きで首を振って否定する。しかし先端からは甘い香り漂う蜜がとろっと零れていた。
「オラ! これが欲しかったんだろ⁉」と吸血鬼の脳裏にダイレクトアタックしてくるにおい。これで一度も人間の血を吸ったことないと幻曜にバレれば、爆笑されそう。
「ふーん。胸だけでイけるんだ。軽羅ったら、とんでもなくえっちだね」
「ち、が」
「じゃあこれ何? 精液じゃないの?」
「あっ」
指で掬うと、軽羅の眼前に突きつけてやる。
「ねえ。これなんなのさ」
真っ赤になっている顔を背け、震えた声を出す。
「……いじめて、くれるな」
「ふふ。可愛い」
ぺろっと蜜を舐め取る。それはそうと、顔が赤すぎる。
額に手を乗せる。
「あっつ」
「ぷしゅう……」
軽羅は、暑さと羞恥とその他諸々で目を回していた。
ともだちにシェアしよう!

