15 / 104
第15話
「あの村で自分を殺した分、君は私に愛されなきゃならない」
「……っ」
初めて宗一の肢体を目の当たりにする。逞しく、しなやかな胸板だった。着痩せしていて分からなかったが、腹筋が割れていて普段から鍛えているように見える。
「白希、聞いてる?」
「すみません、全く……」
彼の裸体がすごすぎて、彼の話が全然頭に入ってこない。それより自分の貧相な身体が恥ずかしくて、前を手で隠した。
そのとき、あることに気付いて戦慄した。
宗一さんも勃ってる。
向かい合わせで密着してるせいで、互いのものが当たっている。宗一のそこは、いつの間にか硬く反り返っていた。
何かまずいんじゃないか、これ。
一秒間でものすごく色んなことを考えた。最終的に、ちーんという仏具を鳴らす音が聞こえた。
たった二日だけど、すごく楽しかったな。もう死んでも後悔ない……。
「ずっとこのまま、くっついていられたらいいのに」
白希の絶望感など露知らず、宗一は彼の首筋を甘噛みした。
「私を忘れないでくれていたことが嬉しいし、想い続けてくれていたことも嬉しい。……後は、身体でも覚えててほしい。全身で私を感じて、求めて。……同化して」
同化……なら、言われなくてもしている。前が熱すぎて、どろどろにとけていた。互いの先端から白い液体が溢れている。
「白希。キスしたい。……駄目かな?」
「……っ」
キスよりずっとヤバいことをたくさんしてきてるくせに、今さらだ。
キスなんて……。
今まで我慢して、とっといてくれてたのか。
全身が熱くなる。唾液を零しながら、彼の顔を見上げた。
宗一さんの瞳は、天空のような青さを秘めている。それが今、雨を降らすかのように潤んでいる。
求められることに少しばかりの喜びと、恐怖と、疑心が混じる。彼は俺をどうしたいのか、というより。
俺は彼をどうしたいのか。
ここまで求めてられたことに、かつてない高揚を覚えている。捕まえられたというより、「捕まえた」と思ってしまった。
白希は自嘲的に笑った。
最低だな。寄生したくないなんて思いながら、しっかり彼に縋りつこうとしてるじゃないか。
甘えるな。自分は優しくされるべき人間じゃない。
「すみません。キスは駄目です」
宗一の唇に人差し指を宛て、その指で自身の唇に触れた。
とても柔らかかった。きっと、触れたらとけて消えてしまう。一晩の夢みたいに無かったことになる。
「宗一さんには俺以外の人と幸せになってほしいから……」
「……」
彼は黙って、お湯が出っぱなしのシャワーヘッドを掛ける。勢いよく噴射するお湯が、自分達の頭上に降りかかった。まるで泣いてるみたいだと思い、少し可笑しくなる。
宗一さんの前髪が垂れて、さらに色気が増す。目に毒だ。
だけど困ったことに目が離せない。彼の顔をずっと見ていたいという欲求に支配される。
「分かった。君が良いと言うまでキスはしない」
宗一は髪をかき上げると、白希の耳朶を甘噛みした。
「あっ」
「その代わり、唇以外は私のものだ」
誰にも渡さない、と腰をホールドされる。背中がぞくぞくして、思わず瞼を強く瞑った。
「この髪も、肌も、感じやすい胸も……私だけが知っていればいい。君を一番最初に見つけたのは私だ。初めて見た時から、……ずっと」
ともだちにシェアしよう!

