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第16話
初めて見た時って……いつのことだ?
限界まで熱に浮かされた頭で思料する。
何となく、とても遠い昔のことを言ってる気がした。ようやく手に入れたと言わんばかりに、宗一は強い力で白希を抱き留める。
本当に不思議な人だ。
俺以上に俺のことを知ってるみたいな……。
誰も知らない、二人だけの空間と、時間。これが夢ならむしろ残念に思ったかもしれない。そう思えるほどに、今は彼に集中している。
「……っ」
……こんな気持ち初めてだ。守らなきゃいけない倫理観とか常識とか。全てなげうってでも、彼と向き合わなきゃいけない気になる。
今夜は、水の音で全て掻き消して。
「……宗一さん。朝のルール、守ります」
自分も邪魔な前髪をかき上げ、腰を密着させた。
今朝決めたルールは……朝は彼から。夜は白希の方から宗一に触れる、というもの。
でも“手を使え”とは一言も言われてない。だから腰を擦り付け、淫らに動かした。互いの猛った熱棒を擦り合わせ、限界まで熱する。
自分からこんな恥ずかしいことをしてるなんて、なにかの冗談みたいだ。
「ごめんなさい……下は見ないで」
自分達のものは既にぐちゃぐちゃに溶け合って、正視に耐えない。だから彼の顔を両手ではさみ、お願いした。「それならこう言えばいい」
腰に手を添えられる。
お湯がたまりにたまって、床に薄い膜をつくっている。
「俺だけを見て。……とね」
脚の間に、また彼の膝が割り込む。バランスを崩して、後ろの壁に背中が当たった。宗一が咄嗟に支えたことで倒れはしなかったが、片膝に座るような形で上に押し上げられ、全てが視界に入る体勢になってしまう。
ぐっと片膝を持ち上げられる。反り返った性器がより彼の目に晒された。
彼は自分のものと一緒に、白希の性器も握り締めた。
容赦なく上下に扱かれ、女性のような声で喘いでしまう。
「白希がイク方が先かな」
「う……っ」
宗一は目を細め、口角を上げる。
その挑発的な瞳にようやく対抗心が芽生えて、彼の顎に手を添えた。
「……俺のことだけ、見ててください……っ!」
彼の親指が、鬼頭の先端を強く擦る。その刺激に仰け反り、前は派手に弾けてしまった。
「はっ……う……っ」
ここまで真っ赤に腫れたところを直視したのは初めてだ。快感の余韻から、まるで見せつけるように脚を開いてしまっている。宗一の膝に乗りながら、白希は彼の性器に手を伸ばした。
彼のものも、大きく膨らんでいる。
宗一は白希を抱え込んだ。また体重を軽くされている。彼はいとも簡単に立ち上がり、前を激しく打ち付けてきた。
「せっかくだから最後まで付き合ってもらうよ」
脚の間に彼の性器が潜り込む。脚をしっかり閉じるように言われ、壁に手をつきながら何とか守った。
素股とか何とか言われたけど、ただ擦り付けているだけだ。……なのに、こちらまで感じてしまう。陰嚢が彼の性器に当たり、前を揺らした。
やばい、また……!
「ああぁっ!」
内腿に熱い線が伝う。前は弾けてないが、さっきと同じ快感が全身を駆け抜けた。
彼も無事イけたようだけど……。
正体不明の刺激に動揺してると、鼠径部を指でそっとなぞられた。
「挑戦的な白希もいいね。ピュアだと思ってたけど色気も出せる。久しぶりにぞくぞくしたよ」
「や、やだなぁ! 演技ですよ。もうやりません」
椅子に腰掛け、顔を逸らす。遠慮がちに目を瞑ると、瞼にキスされた。
「演技で私を翻弄するなんて、悪い子だ」
宗一さんが言えって言ったんだけど……反論したらただじゃ済まない気がして、こくこくと頷く。
「まるでお仕置きされたいみたいな頷き方だね」
「いえいえ、違いますっ! そういうつもりじゃなくて……」
「はははっ。大丈夫、分かってる。白希は本当に見てて飽きないなぁ」
彼ははにかみ、身体中に口付けしてきた。まるでここは自分のものだと言うように。
「恥ずかしかっただろうに。……頑張ってくれてありがとう」
優しく頭を撫でられる。相変わらず落ち着かないけど、その手つきには安心した。
本当はもっと幼い時に、こんな風に撫でられてみたかった。
でも今はいい大人だ。撫でられて喜んでたら確実にやばい人認定される。
顔がにやけそうになるのを堪えて、首を横に振った。
「さて……ついつい盛り上がっちゃったけど、湯船に浸かろうか」
大人二人でも入れるユニットバスに誘われ、恐る恐る足を入れる。二人で入ると一気にお湯が溢れ、床の膜をさらに覆った。
「……いい香り」
「気に入ったなら良かった。ローズソルトを入れてるんだ」
「へぇ。特別感あって、素敵です」
お湯がほんのり薄桃色、手ですくうと香りが立ち上る。
村にいた頃はお風呂は夜中しか許されなかった。夜が遅いから長湯もどうかと思って、湯船は浸からない日々が続いていた。
でも、やっぱりお風呂って良いな。
無意識にお湯を手のひらですくっていると、横から視線を感じた。
「白希はやること全部が可愛いね。今度ひよこでも持ってこようか」
「ちょっ……遊びませんよ!?」
彼のことだから、湯船におもちゃを浮かべて遊ばせようと考えてそうだ。誤解されてはたまらない為、浴槽の中で正座する。
「久しぶりだったり、初めてだったり。色んなことを体験させてくれるから、恥ずかしいぐらいはしゃいじゃいます」
「それでいいんだよ。私も見てて嬉しくなる」
「はは。そんな風に言ってくれるのは、多分宗一さんだけですよ」
ついさっきいかがわしいことをしたとは思えないほど、和やかに笑い合った。
「俺は遊んだ記憶ってほとんどないけど、宗一さんは? 好きな遊びとかありますか?」
「今は時間があっても映画を観るとかドライブするぐらいしかないけど……大学生の時は、それなりに遊んだね。ボーリングしたり、キャンプにハマったり」
「へえ。楽しそう……! 詳しく聴かせてもらえませんか?」
前のめりになり、浴槽の底に手をついた。
「小さい時から宗一さんのことを知ってるのに、実際は全然知らないから……。ご迷惑じゃなければ、好きな物や好きなことを知りたくて」
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