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第92話
アラームが鳴るより先に目を覚ました。
宗一は目元を擦って寝返りを打つ。そのとき腕がなにかに当たり、「痛っ」という声が聞こえた。
「ん……あ! ごめん白希、当たっちゃった?」
ハッとして前を確認する。隣には、自身の額を撫でている白希が寝ていた。
「大丈夫です。……おはようございます」
「おはよう。本当ごめんね」
故意ではないが、彼の額をさすった。赤くもなってないし、ホッとする。
宗一はすぐに上体を起こしたが、白希は何故か起き上がろうとしなかった。
不思議に思って見ると、少し頬のあたりが赤い。
「白希、どうしたの? 具合でも悪い?」
「ん……」
心配になって、彼の頬に手を当てる。すると彼は困ったように身じろぎした。少々辛そうに、布団の中でもじもじと脚を動かしている。
それの仕草だけでどうしたのか分かってしまった。宗一は微笑み、布団の下から彼のズボンに手を伸ばす。
「ひあっ!」
「勃ってるね。しばらく抜いてなかったもんね」
服の上からでも分かるぐらい、白希の性器は膨れ上がっている。
動揺して真っ赤になっている彼を宥めるように、頬にキスをした。
「大丈夫。普通のことだから」
「普通……?」
「そ。男の子だからね」
白希が恥ずかしがると思い、布団は取らずにズボンの中に手を入れた。下着をまさぐり、硬くなった性器を優しく握り込む。
「……っ!」
白希はびくんと肩を震わせ、ぎゅっと目を瞑った。自慰が初めて……というわけではないだろうが、他人に触られるのは、彼の中で初めてなのかもしれない。肩を抱き寄せ、もう片方の手で熱を扱く。
「時々出さないと体に良くないからね」
「あっ……ん、ふ……う……っ」
白希は目に涙をため、呼吸を乱す。自慰を手伝う必要があるのか分からないが、こんな状態の彼を放置することはできない。
彼の身体は知り尽くしている。気持ちいいところも、弱いところも。
だがなるべく恐怖を与えたくなくて、早めにイかせることにした。
上下に扱く手を速くする。ほんの少し力を入れて先端を擦ると、彼は甲高い声と共に飛沫を放った。
「は……っあ」
「よしよし。お疲れ様」
とけてしまったそこを撫で、ズボンを引き上げる。見ると、白希は可哀想なぐらい顔を赤くしていた。
「白希? ご、ごめんね」
中身が幼いことをついつい忘れてしまう。夫婦とはいえ、やり過ぎると犯罪的だ。
慌てて謝ると、彼は嗚咽し、目元を袖でぬぐった。
「ズボン……汚しちゃいました」
どうやら射精したことより、服を汚したことに震えているようだった。思わず眉間を押さえる。
はぁ。……可愛い。
というのはおくびにも出さず、彼の頭を撫でる。
「いいのいいの。後で洗うから、お風呂に入ろう」
昨日は風呂に入らず寝てしまった。まだ時間も早いし、出勤まで余裕がある。
白希を抱き起こし、お湯をためた。温かいシャワーを出し、彼の身体にかける。
「ちょっとスッキリできた?」
後ろから問いかけると、彼は無反応でスポンジを手に取った。どうやらノーコメントらしい。
ぬれて少し長く見える髪。いつもより大人びて、色気のある横顔が印象的だ。
まだ完全に覚醒していないのか、妙に大人しいことも拍車をかけている。
他意はないのだが、足の付け根に手が触れたとき、また彼はビクッと震えた。
これが無意識だとしたら、もはや悪魔に近い。そう思ってしまうほど、今の白希は蠱惑的だった。
また前は少し反応して、反り上がっている。それが宗一の膝で押し潰され、辛そうにぬれていた。
「……白希」
彼の顎に手を添え、目蓋を舐め取る。熱い。唇も、顔も、触れ合っている場所、全て。
熱で頭がやられてしまったみたいだ。彼も自分も、頭がもう働いてない。
ただこの熱を下げる術をさがしている。
「白希。ここ触られるの嫌?」
「ん……や、じゃない……」
「じゃあここは?」
「うあっ!?」
尖った、可愛らしい胸の突起を指でつまむ。弱い力で押したり転がしたりすると、いじらしい反応をしてくれた。
「や……何か、じんじんする……っ」
嫌ではないらしい。ここも時間をかけて可愛がったから、当然と言えば当然だ。
「良かった。……気持ちいい時はいいって言ってね。そしたら、そこをたくさん可愛がってあげる」
向かい合って、白希の乳首を口に含んだ。少し強めに吸い上げると、彼は声にならない声を上げて仰け反った。
「おっと。危ない」
後ろに倒れないよう、素早く背中に手を回す。
快感を追い求め、白希はもう片方の乳首を自分の手で弄り出した。身体は素直だ。どんどん、甘美な時間を思い出している。
前は完全に勃ち上がり、白希の下腹部にぴたぴたと当たっていた。
「こ、こ……っ」
「うん。乳首がどうかした?」
「……好き。触られるの……っ」
とろけた瞳で見据えられる。もう止まれなかった。求められたら尚さら。
彼の二つの乳首を指で引っ張る。白希は脚を開き、無我夢中で宗一の膝に前を押しつけた。
魅力的だ。中身なんて忘れてしまうほど……。
思わず見惚れていると、白希は力を抜き、だらんと寄りかかってきた。
唇は我慢しようと思っていたのに、獣のように食らいついてしまった。
逃げようとする彼の腰を強くホールドし、性器を擦り上げる。
華奢な身体を押さえ込まれ、白希はもがいた。無遠慮に犯される口腔も、透明なつゆでぬれる熱棒も、気持ち良すぎて辛い。
苦しい。だが逃げることは叶わず、彼の掌の中で自分を手放すことで解放された。
「あああっ!!」
さっきよりもずっと薄く、しかし大量に吹き出ている。白希は潮を吹いてしまっていた。今も前から透明なつゆをこぼし、宗一の腹と膝を汚している。
だがそんなことは気にもせず、宗一は白希の顎を掠め取った。
「んあぁっ!」
白希の右の乳首を口に含みながら、また反り返った性器を激しく扱いた。性器も、下にある繋がった袋も、泣き腫らしたようにパンパンに膨らんでいる。
「やだ、もうやだ、……い、ああっ!」
ずっとイッた状態が続いているのだろう。白希は嫌々と首を横に振っていたが、構わずに指で強く擦り上げた。
びくん、とひと際大きく震えた時、最後の一滴がこぼれ落ちた。
「全部出したかな。……無理させてごめんね、白希」
彼の首筋に口付けする。そして腹に飛び散った愛液を指ですくい、軽く舐めとった。
「でもちょうどいいから覚えておいて。私はとっ…………ても嫉妬深いんだ」
「……っ!」
燃え盛る瞳で見つめられ、白希は身震いした。恐怖なのか、快感の余韻によるものかは分からない。ただ間違いなく、身体は宗一の支配下に落ちている。
「ま……前から思ってたけど、貴方って本当に重いです」
白希は身を引き、青い顔で呟いた。
狩られそう。ではなくて、もう既に捕らわれている。放し飼いにされていたから分からなかっただけだ。
こんなにも重い感情を引き摺る人だと分かっていたら、きっともっと早くに逃げ出していた。
「……ふ」
宗一は前髪をかき上げる。鼻先が触れそうな距離で、もう一度白希の唇を奪った。
「これからまた、嫌になるほど愛してあげるから。押し潰されないよう頑張ってね、白希」
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