92 / 104

第92話

アラームが鳴るより先に目を覚ました。 宗一は目元を擦って寝返りを打つ。そのとき腕がなにかに当たり、「痛っ」という声が聞こえた。 「ん……あ! ごめん白希、当たっちゃった?」 ハッとして前を確認する。隣には、自身の額を撫でている白希が寝ていた。 「大丈夫です。……おはようございます」 「おはよう。本当ごめんね」 故意ではないが、彼の額をさすった。赤くもなってないし、ホッとする。 宗一はすぐに上体を起こしたが、白希は何故か起き上がろうとしなかった。 不思議に思って見ると、少し頬のあたりが赤い。 「白希、どうしたの? 具合でも悪い?」 「ん……」 心配になって、彼の頬に手を当てる。すると彼は困ったように身じろぎした。少々辛そうに、布団の中でもじもじと脚を動かしている。 それの仕草だけでどうしたのか分かってしまった。宗一は微笑み、布団の下から彼のズボンに手を伸ばす。 「ひあっ!」 「勃ってるね。しばらく抜いてなかったもんね」 服の上からでも分かるぐらい、白希の性器は膨れ上がっている。 動揺して真っ赤になっている彼を宥めるように、頬にキスをした。 「大丈夫。普通のことだから」 「普通……?」 「そ。男の子だからね」 白希が恥ずかしがると思い、布団は取らずにズボンの中に手を入れた。下着をまさぐり、硬くなった性器を優しく握り込む。 「……っ!」 白希はびくんと肩を震わせ、ぎゅっと目を瞑った。自慰が初めて……というわけではないだろうが、他人に触られるのは、彼の中で初めてなのかもしれない。肩を抱き寄せ、もう片方の手で熱を扱く。 「時々出さないと体に良くないからね」 「あっ……ん、ふ……う……っ」 白希は目に涙をため、呼吸を乱す。自慰を手伝う必要があるのか分からないが、こんな状態の彼を放置することはできない。 彼の身体は知り尽くしている。気持ちいいところも、弱いところも。 だがなるべく恐怖を与えたくなくて、早めにイかせることにした。 上下に扱く手を速くする。ほんの少し力を入れて先端を擦ると、彼は甲高い声と共に飛沫を放った。 「は……っあ」 「よしよし。お疲れ様」 とけてしまったそこを撫で、ズボンを引き上げる。見ると、白希は可哀想なぐらい顔を赤くしていた。 「白希? ご、ごめんね」 中身が幼いことをついつい忘れてしまう。夫婦とはいえ、やり過ぎると犯罪的だ。 慌てて謝ると、彼は嗚咽し、目元を袖でぬぐった。 「ズボン……汚しちゃいました」 どうやら射精したことより、服を汚したことに震えているようだった。思わず眉間を押さえる。 はぁ。……可愛い。 というのはおくびにも出さず、彼の頭を撫でる。 「いいのいいの。後で洗うから、お風呂に入ろう」 昨日は風呂に入らず寝てしまった。まだ時間も早いし、出勤まで余裕がある。 白希を抱き起こし、お湯をためた。温かいシャワーを出し、彼の身体にかける。 「ちょっとスッキリできた?」 後ろから問いかけると、彼は無反応でスポンジを手に取った。どうやらノーコメントらしい。 ぬれて少し長く見える髪。いつもより大人びて、色気のある横顔が印象的だ。 まだ完全に覚醒していないのか、妙に大人しいことも拍車をかけている。 他意はないのだが、足の付け根に手が触れたとき、また彼はビクッと震えた。 これが無意識だとしたら、もはや悪魔に近い。そう思ってしまうほど、今の白希は蠱惑的だった。 また前は少し反応して、反り上がっている。それが宗一の膝で押し潰され、辛そうにぬれていた。 「……白希」 彼の顎に手を添え、目蓋を舐め取る。熱い。唇も、顔も、触れ合っている場所、全て。 熱で頭がやられてしまったみたいだ。彼も自分も、頭がもう働いてない。 ただこの熱を下げる術をさがしている。 「白希。ここ触られるの嫌?」 「ん……や、じゃない……」 「じゃあここは?」 「うあっ!?」 尖った、可愛らしい胸の突起を指でつまむ。弱い力で押したり転がしたりすると、いじらしい反応をしてくれた。 「や……何か、じんじんする……っ」 嫌ではないらしい。ここも時間をかけて可愛がったから、当然と言えば当然だ。 「良かった。……気持ちいい時はいいって言ってね。そしたら、そこをたくさん可愛がってあげる」 向かい合って、白希の乳首を口に含んだ。少し強めに吸い上げると、彼は声にならない声を上げて仰け反った。 「おっと。危ない」 後ろに倒れないよう、素早く背中に手を回す。 快感を追い求め、白希はもう片方の乳首を自分の手で弄り出した。身体は素直だ。どんどん、甘美な時間を思い出している。 前は完全に勃ち上がり、白希の下腹部にぴたぴたと当たっていた。 「こ、こ……っ」 「うん。乳首がどうかした?」 「……好き。触られるの……っ」 とろけた瞳で見据えられる。もう止まれなかった。求められたら尚さら。 彼の二つの乳首を指で引っ張る。白希は脚を開き、無我夢中で宗一の膝に前を押しつけた。 魅力的だ。中身なんて忘れてしまうほど……。 思わず見惚れていると、白希は力を抜き、だらんと寄りかかってきた。 唇は我慢しようと思っていたのに、獣のように食らいついてしまった。 逃げようとする彼の腰を強くホールドし、性器を擦り上げる。 華奢な身体を押さえ込まれ、白希はもがいた。無遠慮に犯される口腔も、透明なつゆでぬれる熱棒も、気持ち良すぎて辛い。 苦しい。だが逃げることは叶わず、彼の掌の中で自分を手放すことで解放された。 「あああっ!!」 さっきよりもずっと薄く、しかし大量に吹き出ている。白希は潮を吹いてしまっていた。今も前から透明なつゆをこぼし、宗一の腹と膝を汚している。 だがそんなことは気にもせず、宗一は白希の顎を掠め取った。 「んあぁっ!」 白希の右の乳首を口に含みながら、また反り返った性器を激しく扱いた。性器も、下にある繋がった袋も、泣き腫らしたようにパンパンに膨らんでいる。 「やだ、もうやだ、……い、ああっ!」 ずっとイッた状態が続いているのだろう。白希は嫌々と首を横に振っていたが、構わずに指で強く擦り上げた。 びくん、とひと際大きく震えた時、最後の一滴がこぼれ落ちた。 「全部出したかな。……無理させてごめんね、白希」 彼の首筋に口付けする。そして腹に飛び散った愛液を指ですくい、軽く舐めとった。 「でもちょうどいいから覚えておいて。私はとっ…………ても嫉妬深いんだ」 「……っ!」 燃え盛る瞳で見つめられ、白希は身震いした。恐怖なのか、快感の余韻によるものかは分からない。ただ間違いなく、身体は宗一の支配下に落ちている。 「ま……前から思ってたけど、貴方って本当に重いです」 白希は身を引き、青い顔で呟いた。 狩られそう。ではなくて、もう既に捕らわれている。放し飼いにされていたから分からなかっただけだ。 こんなにも重い感情を引き摺る人だと分かっていたら、きっともっと早くに逃げ出していた。 「……ふ」 宗一は前髪をかき上げる。鼻先が触れそうな距離で、もう一度白希の唇を奪った。 「これからまた、嫌になるほど愛してあげるから。押し潰されないよう頑張ってね、白希」

ともだちにシェアしよう!