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第6話

 平日なかばの水曜日の夜10時、俺は自分の部屋のベッドの上に正座し、大きく深呼吸をした。  目の前のテーブルの上には、コンドームの箱と指サックとセックス用のローション、さまざまの太さのアナルパールにアナルバイブ。  下準備も万全だ。先日洗浄という作業をはじめてしたときにはそれだけで疲弊したが、三回目ともなればだいぶ慣れるものらしい。まずは第一関門突破といったところだろう。  よしっと気合を入れ、俺はスウェットのズボンと下着を脱ぎ捨てた。  ベッドの上で四つん這いになり、後ろへと指を伸ばす。そっと触れた後孔はさっきの洗浄の効果か柔らかい。今度はローションをたっぷりつけてと中指で穴の周りをふにふにとマッサージする。  あらかた柔らかくなれば、ようやく挿入だ。俺は指サックを中指に被せ、恐る恐る指をゆっくりと入れた。 「うぅ……」  何度やってみても、この感触は慣れることはない。痛くはないが気持ち良くはない。ぞわぞわするというか、どちらかというと不快というか。こんなところで本当に快感を感じられるようになるのだろうか。  ――いやいや、そんな弱気なこと言ってられないぞ! 総一郎さまを女の子にとられていいのか!  こみ上げる不安を蹴散らし、俺は一旦指を抜くとたっぷりローションを足しながらもう一度ゆっくりと挿入した。  第一関節まで入ってしまえば、あとは抜き差しをしたり、円を描くように穴をほぐす。しばらく奮闘すると、数日の頑張りが功を奏したのか、やっと指一本がすんなり入るようになってきた。  はあぁと俺は大きく息をつく。これからが本番だ。  何を隠そう、今日は前立腺というところを探しだすという大きな目標があるのだ。  大きく深呼吸をして覚悟を決めると、再度ローションを付け足して自分の身体の中に指を深くいれた。  指を鈎状にして後孔に差し入れ、腹側の内壁を探っていく。ネットの記事によれば、前立腺があるのは入口から五センチほど奥まった腹側のところらしい。訓練をすれば男でもそこで十分な快感を得られるようになるというのだが。 「んー? どこだろう……。わかんないなあ」  ひとり呟いたとき、指さきが偶然その部分を捉えた。 「っ」  体がびくん、と震えた。  指を第二間接まで差し入れた腹側のところに、わずかにザラザラして膨らんで感触が違うところがあった。そこに触れた瞬間、じわじわとした重い快感が胎の奥に走ったのだ。そんな自分の身体の反応に驚きながらも、もう一度ゆっくりとその部分を腹側に向けて押し上げてみる。 「んっ」  びりっと身体にわけのわからない感覚が走った。やはりここが前立腺なのだろう。  触れば触るほど、その部分はこりっと固くなり膨らんでいく。トン、トンと押し込めば、指越しに内の壁がひくひくと痙攣をはじめたのがわかった。震える内壁が指をこれでもかと喰い締め、そのせいで指の腹がなおさら前立腺に押し付けられる。ぎゅぎゅっと内壁がうねる。  なんだ、これは。  初めて感じる未知の感覚に恐怖がこみ上げてくる。しかしそんな恐怖をおしのけるようにして、腹の底に溜まった快感が唐突に弾けた。 「あ? ぁ、ぁ、ーーーーっ!」  いままで感じたことのない種類の快感で頭が真っ白になった。気が付くと俺は、シーツの上に盛大に白濁を散らしていたのだ。

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