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第10話 ※

 ゆっくりと熱く太い塊が入ってくる。 「……っ……ぐっ……」  未知の感覚に、全身から汗が吹き出し身体が細かく震えだした。丁寧に準備された後孔に痛みはなかったが、内臓を無理やり押し広げるような圧迫感に抑えきれない呻きが漏れる。 「大丈夫か? 辛かったら一旦……」  咄嗟に身を引こうとする総一郎さまの腕を掴んだ。 「い、やですっ、……さ、いごまで、いれて」 「……わかった」  総一郎さまは覚悟を決めたように頷くと、大きく息を吐き、再び腰を進め始めた。狭い中を割り開きながら恐ろしい質量が侵入してくる。 「……っ、ぅ……も、ぜんぶ、はいり、まし、た?」 「まだ半分、だ」 「う、そ……」 「息を、止めないで。ゆっくり、呼吸、して」  覆いかぶさっている総一郎さまの額から汗が流れ、俺の胸の上に滴り落ちる。はっとした。辛いのは総一郎さまもきっと同じなのだ。 「ふぅ……っ、ふう……っ」  身体の力を抜こうと必死で深呼吸を繰り返していると、総一郎さまの手が身体の前に伸びてきた。そしてすっかり萎えてしまった陰茎に触れる。 「え……? あ、ぁあっ、ん――、ひっ」  亀頭が揉みこまれ、出てきた先走りを鈴口に塗り込まれる。つぎつぎに溢れだす蜜を伸ばすように竿をしごかれると、あまりの気持ちよさに力が抜けた。そこにすかさず総一郎さまがぐぐぐっと一気に腰を進めてくる。  前の方に意識がいけば気持ちがいいし、後ろに意識がむけば苦しいしで、もうわけがわからない。俺は涙を流しながら首を振る。どこまでもどこまでも、肉をかき分けて総一郎さまが挿入してくる。終わりが見えない。もう身体が串刺しになる。そんな想像をしたとき、やっと総一郎さまの腰が止まった。 「はいった……」  総一郎さまの呟きに目を開いた。総一郎さまが俺の顔を覗き込んでくる。 「……大丈夫か?」  痛みはないがやはりかなり苦しい。だけど俺はこくこく頷いた。総一郎さまと確かに繋がっている……そう思うとその苦しささえもたまらなく大切なものに感じた。 「うれしい、です……」 「うん」  ふっと総一郎さまがほほ笑む。  思わず息が止まった。まるで心の中に次々と小さな花が咲いていくような感動だった。潤んだ視界の先に誰よりも愛しい人がいる。心を重ねて、身体を結びつける。これが幸せだといわずになんだというのだろう。  俺は震える右手を伸ばし、彼の頬に触れた。  この人に気持ち良くなって欲しい。この人の全部を愛したい。そんな思いが広がっていく。 「うごいて、いいですよ」 「……うん、ゆっくり、する……」  総一郎さまは馴染ませるように腰を揺らし始めた。 「……ぁ……、っ、はぁっ」  ゆっくりとしずかな抽挿に、初めは受け入れることにぎこちなかった中が、だんだんと潤むように柔らかくなってくるのが自分でもわかった。苦しさが薄まり、甘みを帯びていく。   総一郎さまは浅いところまで腰を引くと、前立腺のところをめがけて腰を揺らし始めた。途端にしびれるような快感が走る。   「……あぁ、あっ、あッ……」 「……和希……」  身体を倒した総一郎さまが唇を合わせてきた。接合が深さを増し、総一郎さまがさらに奥までもぐりこむ。俺の陰茎が総一郎さまの腹筋で擦られ、耐え切れず漏らした喘ぎが総一郎さまの口の中に消えていく。  所在無くシーツを握っていた手がほどかれ、総一郎さまの熱い手のひらが滑り込んできた。ぎゅっと握られ、繋いだ両手は顔の横に固定される。  ゆっくりキスをし、舌同士を絡めながらのあやすような律動が始まった。  ペニスがゆっくりと内壁を撫でながら奥を突き、奥のぬかるみを優しく捏ねる。出ていくときは内壁を余すことなく擦り上げられる。ゆっくりとした抽挿に中がどんどん溶けていく。自分の内壁が、ずるりと抜けていく総一郎さまを追いかけては吸い付き、戻ってきた昂ぶりに絡みつく様がはっきりとわかり、あまりの羞恥でさらに体温が上がる。 「……ぅんっ、んっ、……ん」  奥を突かれるたびに身体の深いところに熱が溜まる。じんじんとした疼きと重だるい快感が積み重なっていく。  気持ちいい。  堪らなく気持ちがいい。口の中も下半身も、心の中でさえもすべてが総一郎さまで満たされていると思うと、頭がおかしくなりそうだ。  ちゅっと音を立てて総一郎さまの唇が離れていった。それと同時に少しずつ少しずつ、突き上げが速く強くなっていく。腰が持ち上がり、結合が深くなる。突かれるたびに総一郎さまの亀頭が奥へ奥へと潜り込んでいく。  目をあけると、総一郎さまの顔が間近に見えた。彼の頬は上気して、悩まし気に眉が寄せられている。  目を固く瞑り、快感を追いかけるその顔を見た瞬間、唐突に胎の中から陰茎の先まで一気に快感が突き抜けた。 「……っ、ぅあ、……ん――!」  びくんと震えた俺の陰茎の先から精液が飛ぶ。目の前が一瞬真っ白になり、身体が宙に投げ出される。がくがくと身体を震わせながら俺は絶頂した。 「あ……あ……?」  胎の中がじんじんとして、身体が絶頂からなかなか降りてこられない。ふわりふわりと意識が上擦って、思い出したように何度も身体が小さく痙攣する。神経がむき出しにされたみたいだ。前立腺で射精したことは何度かあるけど、入れられてイくというのはこれほどに気持ちがいいのか。 「和希……」  熱っぽい囁きに視線を向けると、切羽詰まったような総一郎さまの瞳とぶつかった。彼は熱い息を吐き出しながら、俺の両足を抱えなおす。  ――――え?   と思った瞬間、ズンっと切っ先が奥を突いた。 「ぁあっ⁉」  俺は目を見開き叫んだ。衝撃に身体が跳ねる。先端が深い場所を抉ったのだ。胎の奥からじんじんとこみ上げた痺れはすぐに快感に変わっていく。  総一郎さまはもう一度俺の腰を掴みなおすと、歯を食いしばりながら腰を引く。熱い塊が内壁全部を擦りながら抜けていったかと思うと、前立腺を押し潰しながら、勢いよく奥の行き止まりを突く。ローションで溶け切った部分からは耳を覆いたくなるような水音が聞こえ、俺はいやいやと首を振った。 「ぁぅっ、あっ、まって、おれ、いま、イって……」 「すまん……っ!」  切羽詰まったような総一郎さまの声が聞こえ、抽挿が激しくなっていく。 「あっ、ぁんっ、……ぁあっ、ひっ」  俺の喉からはひっきりなしに声が漏れる。総一郎さまのペニスで一突きされるたび、どんどん狭い隘路がこじ開けられてゆく。胎の奥に、快感とは言えない重ぐるしいものが溜まってゆく。 「お、く、つかないでっ、く、るし……」 「ぐっ……」  必死に懇願していると言うのに、低く唸った総一郎様は俺の足を掴み、さらに挿入を深めてきた。パンっ、パンっと肌と肌がぶつかる音が響き、俺と総一郎さまの呼吸はどんどん荒くなっていく。   「好きだっ、和希っ」 「……っあ、ぁんっ、おれ、も……、あぁっ」  総一郎さまの言葉に心も身体も一気に熱くなった。分厚い身体にのしかかられて呼吸が苦しいのに、必死で腰を振る総一郎さまが愛しくてたまらない。ずん、ずん、と奥を突かれるたびに鈍く重い快感が蓄積されていく。  ふいに総一郎さまの手が伸びてきて、俺の陰茎に触れた。亀頭を揉みこんでぐちゃぐちゃと竿を擦られる。 「ぁっ、やぁ……、っ……。そ、んなに、したら、またイっちゃ……」 「ああ、俺、もっ、そろそろ……」  快感がせり上がって来る。 「あ、あ、あ、イくっ、……っ、……イ」  ひときわ強く奥が身体が跳ねあがる。  視界が白くなり、俺は目の前の総一郎さまの身体にしがみついた。脊髄を雷のような快感が駆け上がる。 「……ぁ――――っ」  陰茎から白濁が噴き出した。経験のないほどに大きな絶頂だった。視界が白と黒に点滅し、意識が何度も遠のく。 「……っ、……ぅあ」  後孔がうねる。咥えこんだペニスを巻き込みながら収縮している。  抱きついている総一郎さまの背中が大きく波打ち、彼のペニスがぶるりと大きく震えた。一瞬の空白ののち、ビクンビクンと激しく脈動しながら薄いゴム越しに精子を最奥に叩きつけられるのがわかった。 「……っ、く……ぅ、……ぁ」  総一郎さまの小さな喘ぎが聞こえた瞬間、背筋がぞくりと疼いた。反射的に射精中のペニスをきゅうと締め付けてしまい、その刺激で身体をまた快感が駆け抜ける。 「……ぁ、……き、もち、いい……」  緩やかに絶頂が戻ってきて、俺は身体をびくびくと震わせた。総一郎さまが呻き、彼のペニスも俺の絶頂に応えるように何度も何度も胎内で跳ね回る。  必死に総一郎さまにしがみつき、俺は何度も引き返してくる絶頂の波に呑まれた。   長い長い射精だった。  長い長い絶頂だった。  はあはあと大きく息を乱しながら、ゆっくりと総一郎さまが身体を離した。抱えられていた足がゆっくりとシーツに下される。  一度のセックスで、三回もイったなんて初めてだ。もう身体のどこにも力が入らない。  俺は呆然と自分の下半身の惨状を見た。ペニスは力無く腹の上に垂れ下がり、下生えやへそ、胸のあたりまですごい量の白濁が散っている。限界まで開かれ続けた足には少しも力が入らず、シーツの上に無造作に投げ出されたまま閉じることさえ出来ない。ピクリピクリと痙攣している自分の太ももの間から、総一郎さまが見えた。  総一郎さまは荒い息を吐きながらコンドームを外すと、ゆっくりと顔を上げて俺を見た。 「……ぁ」  思わずぶるりと震えた。総一郎さまの瞳は、未だ激しい情欲で燃えていたのだ。その瞳に射られて、もう勃ちあがらないはずの俺の陰茎がぴくりと震える。 「和希……もう一回……」  総一郎さまが新しいコンドームのパウチに手を伸ばし、荒々しく封を切る。 「ぁう……、う、そ……」  新しいコンドームを装着した総一郎さまがペニスにローションをかけ手でしごくと、凶暴な屹立が目の前で育っていく。  あれでまた奥を突かれたら、頭がおかしくなってしまう――。恐ろしい予感に俺は首を振った。 「む、り……。もうムリです……」  這いつくばって逃げようとした足首を捉えられ引き寄せられる。身体を仰向けにひっくり返され、二つ折りにされるかと思うくらいまで尻だけを高く上げられる。窄まりに熱い塊が押しつけられ――。 「あ――――っ」  ズバン、という音とともに一気に奥の奥まで差し抜かれた。目の前に火花が散る。いきなり侵入した異物を押し返そうと身体が反応して、内壁がぎゅうううっと収縮する。 「……っ、……ッ、……ああ、いれただけでイってしまったのか?」  衝撃にがくがくと震える俺のへそのあたりに手を伸ばし、総一郎さまがうっとりと呟いた。 「……え? イ、た……?」  俺にはもうわけがわからなかった。下半身に射精した感覚などなかったのだ。しかし自分の陰茎を見ると、鈴口からとろりとした白濁が垂れている。 「可愛い……可愛い、和希」  総一郎さまの呼吸が急に荒くなり、さらに体重をかけてのしかかってくる。二つ折りにされた体勢の苦しさに呻いた次の瞬間、抜けそうなまでに引き抜かれたペニスが胎の底まで一気に落ちてきた。 「うあっ!!」  俺は口を開け叫んだ。  息を整える間もなく、真上から垂直に熱い塊が落ちてくる。長いストロークでかき混ぜられた接合部からは泡だった水音が聞こえ、身体を走る暴力的な快感に叫び声が止まらない。前立腺を擦られ、胎の奥を亀頭で突かれる度に身体が勝手に跳ね回る。  陰茎の先からは奥を突かれるたびにこぷりこぷりと精が漏れ、身体を揺らされるたびに白濁の雫を撒き散らかす。  苦しさも衝撃もすべて快感といううねりになって身体中を暴れまわる。出口が見えない。  苦しい。  息が吸えないくらいに苦しい。  胎の奥を猛ったペニスで何度も何度も叩かれ、もう何も考えられない。  総一郎さまが背中を丸めてぶるっと大きく震えた。太ももを掴む手に力が入り、ズバンと力強く振るったペニスが、訳のわからない深部まで突き刺さった。 「――――ぅ、ぁ……」  さんざんいたぶられた胎の一箇所に、すべての快感がなだれ込む。胎の奥がひくんひくんと痙攣を始めた。内壁が大きくうねり、収縮を繰り返す。  ひくんひくん。  ひ……くん。  その瞬間、膨れ上がった悦点が一気に弾けた。 「あ――っ、あ――――っ!!」  ちかちかと視界に極彩色の光が点滅し、陰茎から何かがぷしゃあぁっと噴き出す。  死ぬ、  死ぬ、  死ぬ、  頭の中がそれでいっぱいになり、そして視界が赤く染まったかと思うと、俺の意識はブツリと途切れたのだ。

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