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✦Ⅲ章✦ 復讐は薔薇の香りで

 愛してしまったことが、いちばんの復讐だった。  ナオトとの再会を果たしたルイは、料理という“静かな刃”を手に、かつての自分を踏みにじった者たちと向き合い始める。だが、その皿に込めるのは赦しではなく、選択と決断の意志──「誰のために生きるか」という問いに、ようやく自分自身の答えを刻み始めた。  一方、仮面の男アキトは、ルイに対する“所有”の欲望を隠さなくなっていく。優しさに見せかけた支配、問いかけに偽装した誘惑。その仮面の裏に潜む“素顔”と“過去”もまた、ルイの手によって暴かれようとしていた。  舞台は、“黒薔薇の香り”が満ちる夜の厨房、そして“食卓”という名の戦場へ。  誰かに選ばれたいと願っていたルイが、今度は「誰を選ぶか」で誰かを傷つける番になる──  甘い毒のような恋情が交差する第三章。  ここから先は、もう戻れない。

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