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第四章 配信開始
隼人が自らコーヒーを淹れる様子を、配信する。
この提案に、笹山は賛成した。
『いいんじゃない? 初回は、桐生さんが慣れてることを取り上げても』
「巧く、できるでしょうか」
『リラックス、リラックス。視聴者の反応を見ながら、方向を修正していけばいいし!』
「解りました」
こんな会話を交わし、隼人は携帯電話を握り直した。
「それで。台本は、いつできますか?」
『は? 台本?』
「ええ。わずかな時間の配信になると思いますが、気を抜かずていねいに……」
生真面目な隼人の言葉に、笹山は呆れた笑い声を立てた。
『嫌だなぁ、桐生さん! そこまでガチガチに考えなくても、いいから!』
「え? 台本は無い、ということですか?」
『シナリオ作っちゃったら、いつもの桐生さんしか見られないじゃない』
「台本が、無い……。そ、それで、編集は?」
『編集はしないよ。オンデマンド配信じゃなくって、ライブストリーミング配信でいくから』
「な……ッ!」
笹山との通話を終えた隼人を、比呂が心配そうにのぞき込んだ。
「隼人さん、大丈夫?」
「……あまり、大丈夫じゃない」
人生初の、プライベート動画配信。
それを、台本無しで、しかもリアルタイムで行え、とは!
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